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松本ぷりっつ (まつもと・ぷりっつ)
1974年、埼玉県生まれ。短大卒業後、幼稚園に勤務するかたわら、『ザ・マーガレット』で漫画家デビュー。結婚を機に幼稚園を退職、家事育児をこなしながら漫画家の活動も続ける。2005年、自分の子どもたち(3姉妹)との日常を描いたイラスト付きブログ「うちの3姉妹」を開設。たちまち「育児部門」アクセスランキング第1位となる。2006年、初めての単行本『うちの3姉妹』(主婦の友社)を刊行し、ベストセラーに。2〜10巻&特別編も好評発売中。現在、雑誌『Como』(主婦の友社)に「ぷりっつ家は、今日ものほほん」、『すくすくパラダイス』(竹書房)に「うちの3姉妹」を連載中。また、2008年4月からテレビ東京系でテレビアニメ「うちの3姉妹」がスタート。好評につき、2009年4月以降も放送継続。
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『うちの3姉妹』(10)
松本ぷりっつ著
主婦の友社
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『うちの3姉妹』(9)
松本ぷりっつ著
主婦の友社
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『うちの3姉妹特別編 ハワイでおっぺけぺ』
松本ぷりっつ著
主婦の友社
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『うちの3姉妹』 松本ぷりっつ著
主婦の友社
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『うちの3姉妹』(5)
松本ぷりっつ著
主婦の友社
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『Como』
2009年10月号
「ぷりっつ家は、
今日ものほほん」連載中
主婦の友社
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『松本ぷりっつの 子育てバッチコイ!うちの子おっぺけ 伝説編』
松本ぷりっつ著
竹書房(SUKUPARA SELECTION)
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『ぴよぴよ保育園あいこせんせい』(1)
松本ぷりっつ著
竹書房
(バンブーコミックス)
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『すくすく パラダイス』
Vol.17
「うちの3姉妹」
竹書房
(本当にあったゆかいな話DX増刊 2009年10月号)
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「うちの3姉妹」創作秘話
── 二〇〇五年開設のブログから生まれた『うちの3姉妹』は、書籍、アニメ、ゲームへと広がり、このたびシリーズ十巻目が発売されました。原点のブログは、現在までにアクセス数が一億七千万件を超える超人気ブログとなっています。まず、ブログを開設したいきさつを教えてください。
松本 ブログというものが流行っているなあという軽い気持ちで、まず趣味の競馬のブログを始めました。競馬好きの人がコメントをくれたりして面白くなり、もう一つ何かやってみようと始めたのが「うちの3姉妹〜マンガで見る今日の出来事〜」でした。娘たちの言動で面白かったことにイラストを交えて載せていたら、読者がワーッと集まりました。始めて三、四ヵ月すぎた頃、主婦の友社の編集者・Eさんから「本にしませんか?」と連絡をいただきました。当時はブログの書籍化なんて思いもよらず、連絡があっただけで「もうこれで一生の思い出だ」と感動! これほど広がったことに驚くばかりです。Eさんは当初から「十巻まで出したい!」と言って下さり、皆さんの熱意のおかげでここまでこれました。
── 十巻では、長女の「フー」は七歳、次女の「スー」は五歳、三女の「チー」は三歳ですね。人気が広がる中で、ブログの書き方、考え方に変化はありましたか。
松本 家庭内にあった面白い、笑えることを書こうというスタンスは変わっていないですね。高校生の頃から、漫画を描いて友だちに笑ってもらうのが好きでした。このブログも、会社にいる主人に娘たちの面白い言動を笑ってもらえたらと思って…。バレエのレッスンや、季節の行事のことを書いてとリクエストをいただきますが、もともと「育児日記」をつけるつもりはなく、私が面白いと思ったこと、自分の中で合格したネタしか書かないんです。子供が面白いことを言っただけではネタにならないので、ほんのちょっとした一言でも、「今のをオチにしてこういうイラストにしてこんなツッコミを入れよう」とか、起承転結を考える。アンテナを張って、子供の面白い言動はその場でメモします。大笑いした出来事じゃなくても、こう書けば笑わせられるなと構成を考える、漫画家としての癖があります。でも、ものすごくたくさんの人が見ている場所で書いているので、面白いからと何でも書くわけにはいかない。自分なりの制限もできてきました
── ブログだから、読者の反応もダイレクトなのでは。
松本 自信を持って書いて「面白かった」と言われると、それが創作のバロメーターになります。逆に、これは絶対笑うだろうなと思い載せて反応が少ないと、あれ、描き方がおかしかったかな? と自信をなくすときもあります。
── 気持ちが引っ張られたものを書いてみたら深い物語があったとか、そんな出来事は。
松本 笑わせられるかなと思って書きはじめたテーマが、書くうちに違う方向にいくことがありますね。子育てをしていると感動する場面がすごく多くて、グッときたこともたまに書きます。書きながら子供の成長を感じて、自分の感動が高まっていく。そういう記事に対しては、読者の方からもじーんとしたという反応がたくさん来ます。
三人の個性を大切にしたい
── シリーズ十巻目では、三女が生まれたときのことが「番外編」として書き下ろされています。お母さんが入院して、まだ小さい長女と次女がお留守番をして、赤ちゃんとお母さんをいたわる姿がけなげでした。三人の育児は大変ではないですか。
松本 新学期用品の名前つけ、袋づくりで毎日ミシンやアイロンをかけまくったり、保護者会の時間が重複したり、三人になってからは、「大変だ」と考えている時間がないくらい(笑)。最初から「子供は三人」と決めていました。最初は男の子が欲しかったんですが女の子が生まれて、二人目は男の子がいいかなと思っていたら次も女の子。じゃあ三人目も女の子でそろえたいと願って、かないました(笑)。三人とも本当に仲がいいんですよ。例えば人形を渡すと、喉が渇かないのかなと思うくらい、三人でずーっと喋ってひたすら遊んでいます。私自身は四人姉弟の次女で、しっかりした姉を私が追いかける感じでしたが、うちの長女は「妹が遊んでくれない」と私に愚痴ってくるんですよ(笑)。妹に面倒をみられているようでいいのかなと思うんですが、もう少し大きくなったら三人で一緒に遊ぶ姿もなくなると思い、今はこれでいいと思っています。
── これまで書いた中で、印象に残っているエピソードは。
松本 いっぱいありすぎて出てこないですね(笑)。ただ、読み返していつも笑わせられるのが、長女なんです。あるとき学校の宿題を聞いたら、「もも、もも」と言い続けている。何かと思ったら、宿題のスピーチのピーチ≠、桃≠セと思っていたんですよね(笑)。「宿題は…すもも、早くしゃべるすもも」とずーっと言っているのに、「スピーチ」という言葉は思い出せない。本人は狙っていないんですけれど、突き抜けたセンスがあるというか、不思議な面白さなんです。想定外のことを言うんですよね。
── 次女、三女については。
松本 次女は忘れ物は絶対しないし、先生の話はすべて覚えてくるし、真面目できちっとしています。次女がお姉ちゃんにいろいろ教えてあげたりして、長女も一生懸命、次女の話を「うん、うん」って聞いていることがあるんですよ。長女はポーッとして忘れ物ばかりなので、子供が長女だけだったら、私の育て方が悪いのかも、なんでこうなんだろうと思ってしまうかもしれません。でも真面目な次女も育っているから、私のせいじゃないと思える(笑)。
子供が生まれる前に幼稚園の先生をしていたので、子供の扱いには自信がありました。ところが、長女は小さい頃すごい暴れん坊で、子育てが思い通りにいかずに空回りしていました。全く性格の違う次女が生まれて、子供の性格って生まれ持ったものなんだなとわかり、楽になったんです。次女は私の救い的な存在ですね。今は3姉妹を比べて楽しみ、まあいいかと、長女を温かい目で見られるようになりました。主人とも「フーちゃんはフーちゃんだから、これでいいんだよね」と口癖のように言っています。ママたちは自分を責めちゃいけないと思います。私自身も楽しく子育てしているように見られますが、現実では楽しくないこともあります。イライラしたり、子供を叱ったり、悩みを書いたら毎日更新できますね。でも書くのは笑えることだけ。子育て中の読者の方から、「ブログを読んで気が楽になりました」と感想をいただくと嬉しいです。
── 子育てで大切にしていることは?
松本 感情的にならないようにしよう、と思いながら、できていないです(笑)。子供の個性を潰したくない、そのままで見守っていきたいなとも思いますね。どこかネジが外れたような長女のメルヘンチックなところがどこまで続くか見ていきたいですし、次女の自由な感じも消したくないですし、三人それぞれの個性は大事にしたい。
── 長女は、次女は、と話して、なんとなく三女が省かれていますね(笑)。
松本 あの人はいまだに未知の世界で、ちょっと私もつかみがたい(笑)。強くて、恐いもの知らずで、上二人と違う道を行っています。昨日も、いい加減にしろ、調子に乗るなと、がっつり怒られていました。年齢が上がってくると、今度は三人それぞれにどう対処するかの悩みも深くなってきましたね。長女は一番上のお姉ちゃんなんだから頑張ってねと厳しくしつけて、つい期待をかけちゃう。次女は真ん中で、親の注意がおろそかになりがちだから「寂しい」と思わないように、逆に次女が特別扱いされていると思うときがあるくらい気を遣います。三女は末っ子だし、いつまでも赤ちゃんでいいなと、今も赤ちゃん扱いして甘やかしてしまいます。
── ブログの方では、開設時、三歳だった次女が小学生になり、赤ちゃんだった三女が制服を着て幼稚園に通っていて、わずか四年でみるみる大きくなった、成長する姿に感動します。同じ思いの読者が大勢いるのでは。
松本 ブログを続けることで、結果的に成長を見てもらう形になりました。「中学生になったらどうなるんだろう」「この先もずっと、二十歳になるまで続けてください」と言っていただくんですが、笑えることがあったからちょっと見て、聞いて、書くというスタンスは崩したくないので、そのスタンスが維持できるところまでと考えています。成長については、他にもいろいろな形で書いていきたいという気持ちがあります。四年間はあっという間でしたけれどね。長く続けると読み返すことができて、このときも、このときも笑ったなあと思い出が出てきて、続けてよかったなと思います。
── 子供たちは自分たちが描かれていると知っていますか。
松本 アニメを見て「これホントにフーちゃんたち?」と笑ったり、外で「3姉妹」のキャラクターを見て、「お母さん、すごいね」と喜んでくれます。アニメに描かれる数年前のことを他人事のように思うくらい、子供たちは成長していて、さらに数年後には同じように現在のことを振り返っているんだろうと思います。だから私も、今ぽろっとこぼれている日常のことを一生懸命メモしているんですよね。
ただ、例えば次女がアニメのフーちゃんを見て「お姉ちゃん」と呼んだら、「あれはお母さんが絵にしたキャラクターだから、お姉ちゃんじゃなくてフーと呼んでね」と、ちょっとだけ『うちの3姉妹』と自分たちとの間に線を引いてほしいと気をつけています。「3姉妹」がメディアで広がり、環境が劇的に変わっているのは確かですが、家族の生活を特別なものにしたくはないので。
── 今後の目標などを教えてください。
松本 『松本ぷりっつの子育てバッチコイ!』も八月に発売されました。読者の方から「悩んでいたけれど、子供をもう一人ほしくなりました」というメッセージをいただくと、ありがたいなと思います。私が書いているものを見て、子育てに対する勇気を少しでも得て、子育てを楽しんでもらえたらすごく嬉しいです。私も「うちの子も一緒です」「笑いました」という声をいただいて、そこから元気をもらっています。
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