みなさんは、野暮な人といえばどんな人を思い浮かべるでしょうか。雰囲気を読めない人、察しの悪い人といったイメージでしょうか。たしかに漠然としたイメージはつくのですが、あらためて野暮とは何か、と問われたならばはっきりと答えられる人は少ないのではないでしょうか。
江戸の人々の美意識からみて、「野暮」、「イキ」とはいかなるものだったのか。また、いまの私たちの生活をそのような視点で眺めてみると、どのような現代の野暮とイキがみえてくるのだろうか。そういった疑問から、本企画はスタートしました。
著者は現在、公共広告でも話題の「江戸しぐさ」唯一の語りべとして活躍している越川禮子さん。テレビCMでも、細い道で傘をさした者同士がすれ違うときの「しぐさ」などが取り上げられていますが、実際、江戸しぐさとは、そのような単なる礼儀作法に終始したものではありませんでした。それは、過密都市・江戸で争い事もなく共生していくために育まれてきた精神であり、弱者をいたわり他者を尊重する、誰に対しても平等に接する、分をわきまえる、などといった生き方の指針、人生哲学を示したものでもあったのです。
まさにそれらは、イキな江戸っ子たちの心意気、心配りの集大成ともいえます。当時、江戸しぐさの価値観と違った考え方、行ないをしてしまうと、「野暮な人」としてまわりからはたしなめられたといいます。
本書ではそんな江戸しぐさをもとに、現代の野暮な人、野暮なコト、野暮なモノたちを取り上げながら、ほんとうの「イキな生き方」を提示します。日常生活はもちろんのこと、ビジネス、文化、娯楽にいたるまで野暮の氾濫する現代ですが、本書の中で必ず、日本人の忘れかけた美意識と出会えるはずです。
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