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『ゲゲゲの女房  人生は……終わりよければすべてよし!!』
武良布枝
実業之日本社 学芸出版部 鈴木宏昌さん


 
巨人・水木しげると歩んだ半世紀

  著者の武良布枝さんは『ゲゲゲの鬼太郎』の生みの親・水木しげるさんの夫人です。水木さんが四十代半ばに人気マンガ家になるまで、夫妻は長く貧乏のドン底に喘ぎ、大変な辛酸を嘗めました。本書の前半では、島根県の安来市で静かに慎ましく暮らしていた布枝さんが、結婚を機に上京して直面した、当時水木さんが身を置いていた貸本マンガ業界の悲惨な現実と、洗うがごとき赤貧の日々が語られます。そんな中で、どんなに報いられなくとも精魂込めてマンガを描き続ける水木さんの姿に心打たれ、「この人が認められる日は必ずやってくる」と確信し、必死に水木さんを支え続けるのです。その「予言」は昭和四十(一九六五)年に『テレビくん』で水木さんが講談社児童漫画賞を受賞したことで的中。「ついに来るべきものが来た」と布枝さんは思ったそうで「水木は必ず認められるという確信が揺らいだことは一度もありません。それだけは自信を持って言えます」とも語ります。
 以来、『悪魔くん』『ゲゲゲの鬼太郎』『河童の三平』が次々とテレビ化され、水木さんは大人気マンガ家に。後半では、水木さんが売れっ子となって貧乏と決別してからの夫妻、家族の激動の人生が語られます。水木さんはあまりに多忙なために家族の気持ちを顧みなくなり、夫婦、家族の心はバラバラに……。名声と引き換えに、貧乏以上の「不幸」が次々と一家を見舞います。が、水木さんが紫綬褒章を受章、人気マンガ家としてより「妖怪研究家」として知られるようになるころから、仕事を減らし家族と向き合うようになります。そして、「なまけ者になりなさい」「のんきに暮らしなさい」と嘯き、「幸福論者」として言動が注目されるようになっていくのです。
「人生は、『終わりよければ、すべてよし』です」と決然と語る布枝さん。夫妻が晩年につかんだ「幸福」とは……? 水木さんを最も身近で見続けてきた夫人が語る、生きる伝説・水木しげるの真実とは……?


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