金子みすゞは、幻の童謡詩人≠ニいうキャッチフレーズで呼ばれ、根強い人気を持つ詩人である。大正の一時期、脚光を浴びながらも、忘れられていた詩人が没後75年以上経った今、注目されているのはなぜだろうか。思うにみすゞの詩に出会った人は、その感動を誰かに伝えようとする、そして人から人へ波紋のように広がっていき、新しい読者が増え続けるという現象が生まれている。その波紋の中からみすゞの詩を素材にした書籍、カレンダー、絵、書、歌などいろいろなパフォーマンスが広げられているのである。
本書「みすゞさんぽ」「みすゞびより」はみすゞの詩と小さな人形によるコラボレーション詩集である。「みすゞさんぽ」は小さなもの、身近なものを見つめる詩35編、「みすゞびより」は大空に広がるような夢や希望を詠った詩36編を集めた。
本書の人形を制作した人形作家・三瓶季恵氏はみすゞの詩に魅せられた一人である。人形制作のポイントを次のように言っている。「なつかしさや素直なやさしい気持ちを表現したかったので天然の素材を使用」、「見過ごしてしまうような小さな出来事や変化を気づかせてくれる詩を多く収録したので、人形作品も1cm〜5cmくらいの小さな作品を作った」また「人形の材料は陶土を使用し、形を作った後、乾燥させオーブンで20分ほど焼き顔彩で着色した」
小さな立体的な人形はみすゞの詩の世界に新風を吹き込んでいる。この詩集のひとつひとつの「小さなことばの奥深さ」「ことばの豊かさ」、さらには金子みすゞのみずみずしい感性にも触れてもらいたい。
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