「ハリー・ポッターの次はこれに違いない≠ニ話題になっていた作品があるんだ」
ロンドンのブックフェアから戻ってきた上司にそう言われ、原書を見せてもらったのが私とこの本の出会いです。
どの角度から見てもキラキラと輝く装丁、トンネルの向こうからカンテラでこちらを照らす謎めいた影、そして格好良いロゴ。ミステリーやファンタジーに目のない私はあっという間に惹きつけられてしまいました。
『ハリー・ポッターと賢者の石』の原稿が最初に持ち込まれたとき、その面白さを見抜き世界的ベストセラーにした元ブルームズベリーの編集者、バリー・カニンガム氏が「次のハリー・ポッターはこれだ」と語っているのがこの作品、『トンネル』です。
本格的に編集の作業に入って一番驚いたのが文章量の多さです。原書は1冊ですが、日本版は手に取りやすいように上下巻に分けて発売しました。翻訳が上がってからはひたすら原稿と向き合う日々。佳境に入った頃は徹夜も重なり、病院と会社を往復していました。それでも原稿を読み始めると、どっぷりと『トンネル』の世界に入り込んでいました。部署を越え、社内の色々な人間に校正を依頼したのですが、なかなかゲラが戻ってこない。その理由が皆一緒で「ついつい真剣に読みふけってしまう」というもの。こちらとしては「もっと早く返して!」と思いながらも、それだけこの作品の世界観はすごいのだと実感し嬉しくもありました。
本文と同様に力を注いだのが装丁です。何よりも譲りたくなかったのが
キラキラ≠ニ光るカバー。日本版も豪華な紙を使用し、デザイナーや印刷所の方にご協力いただき今のカバーが仕上がりました。
『トンネル』は既に37ヵ国で出版が決定し、ハリウッドでの映画化も決定しています。これからますます世界的に大きくなるこの作品に出会えたことを大変嬉しく思います。多くの方が地下世界への旅に誘われ、魅了されることを願っています。
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