本書の原題は「孫悟空はいい社員」。中国では既に『水煮西遊記』という本が刊行されていたため、こうしたタイトルになったとは著者の弁。そもそも著者の処女作『水煮三国志』(原題は『水煮三国』)が中国国内でミリオンセラーとなったことから、「水煮」という言葉が大ブームとなった。日本でも一時書名に「超」と付けるのが流行したがそれと似た現象である。そうしたことから『水煮西遊記』と命名できなかったことは「水煮」の生みの親からすると苦々しいことだったろう。なお、「水煮」とは激辛で有名な四川料理の「水煮魚片」に由来し、辛味のある風刺を利かせた≠ニいう意味が込められている。
『水煮三国志』の執筆にあたって、ビジネス現場で役立つ本音のノウハウを開示することに著者はこだわった。しかし、本でそれを明かすには、ややもすると格好を気にしてオブラートに包んだような表現になりかねない。そこを、「男性社員の心を惑わさないためにオフィスには美女は不要」など読者の反応を恐れながらも、著者の本音を真正面からぶつけてきた。そういったことを多くの中国ビジネスパーソンが支持したのだろう。
瞬く間に人気ビジネス書作家となった著者に、原稿依頼が殺到するのは中国でも同様である。このとき、第二作としてイメージしたのが本書『水煮西遊記』であった。西遊記をビジネス書として生かすには、三蔵法師、孫悟空、猪八戒、沙悟浄の際立つ四人(一人+三匹?)のキャラクターを良い組織づくり、良い仲間づくりとして転化させることが最も面白いと著者は考えた。ここでも辛味のある風刺を利かせた≠アとが功を奏し、中国では刊行後一年で四十万部を超え、売れ行きは現在も衰えていない。
『水煮三国志』では「経営・人材管理・マーケティング」をビジネステーマの中心と据えたが、『水煮西遊記』では「チームマネジメント(組織管理)」にフォーカスした。組織運営に悩みを持つ管理者にとっての指南書となる本書は、日本のマネジメントにも十分役立つが、それとともにパロディ小説としても十分楽しめる。
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