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長嶋 有(ながしま・ゆう)
1972年埼玉県生まれ。東洋大学2部文学部国文科卒業。会社勤務を経て、01年「サイドカーに犬」で文學界新人賞を受賞(芥川賞候補作)、本年「猛スピードで母は」で第126回芥川賞を受賞する。



受賞作のご紹介
『猛スピードで母は』
文藝春秋

第126回芥川賞受賞作!
家族の求心力が失われている時代に、勇気を与えてくれる重要な作品である(村上龍)。
期待の新人、猛スピードでの快作です。


 「お猪口を口に運ぶ間もなかった」とは前回の芥川賞受賞者、玄侑宗久氏の談話だ。それほど頻繁に電話が鳴り続けたのだ。
 受賞すると生活が激変する。過去の受賞者のコメントからも、編集者の話からも窺えた。相当な覚悟が必要だ。お猪口はものすごい速さで口に運ぼう(必要な覚悟ってそういうことか?)。
 しかし、電話はそこそこしか鳴らない。お猪口どころか蛇口にかじりついての水のがぶ飲みも余裕で出来る。おかしいな。
 むしろ多かったのはメールだ。到底、返事しきれる量ではない。しかし、多くのメールには「ものすごくお忙しいことと思います。返信は不要です」と添え書きされている。なんでだ。なんで分かっているんだろう。まるで皆、芥川賞は子供の頃に一度すませたみたいな調子ではないか。
 不可解な気持ちを抱えたまま、日課となっている立ち読みにでかけた。キヨスクで新聞の朝刊を買ったら、朝日の「人」欄に僕がでている。写真の下には「毎日立ち読みしています。29歳」あっ、こんなこと書いてる。これからはちょっとでも立ち読みしてると「あっ長嶋が『ファミ通』の白黒ページだけ読んでた」「長嶋が『インストール』の奥付の刷数確認してた」「長嶋が」「長嶋が」。分かった。分かったよもう。買うよ、これからは。と思いつつサークルKで週刊文春を読むが、誰もみてない。
 帰宅してシュークリームを食べようとしたら電話が鳴った。母からだ。長い電話になった。途中でPHSが鳴った。母との電話を急いで終えて出ると父だった。切ると今度は伯父からかかってきた。切るとまた父。
 一時間は話し込んだろうか。やっと電話を切ったらシュークリームを踏んでしまった。
 そんなわけで第126回芥川賞受賞者、多忙の弁は「シュークリームを踏むほど忙しい」これに決定。後で「あなたには壇家がいないから」と編集者に慰められた。仕事は増えたが、今はまったく通常の生活である。
授賞式会場にて

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