涙なくしては読めない本です。編集作業を進めているあいだ、泣けて泣けてしかたがなかった本です。校正をしていてふとした一行に涙腺がゆるんでしまうこともしばしばでした。愛するものを守るために一命をなげうつのだという強い決意と、どうしてもそこからはみ出してしまう気持ち――。まっすぐな言葉でつづられた手紙の中で交錯するこの二つの心情が胸を揺さぶるのです。
『いつまでも、いつまでもお元気で』は三十三名の特攻隊員の方たちの遺書・遺詠を美しい風景写真とともに紹介した本です。書名も手紙の一節がもとになっています。二度と還ることのできない出撃を前に書かれた手紙からは、壮絶な決意を胸に秘めた心優しい青年たちの姿がありありと浮かんできます。
親孝行できなかったことを何度もわびる息子がいます。妹に両親の世話を頼みながらも「と言っても、できれば早く嫁に」と気づかう兄がいます。「人のお父さんをうらやんではいけませんよ」と優しく諭す父がいます。死んだらホタルになって帰ってくるよと言い残した宮川軍曹は力強く「轟沈」と書き残しています(宮川軍曹のエピソードについては小社刊『ホタル帰る』をぜひ御高覧ください)。
戦後の常識をもとに過去を断罪するのではなく、また逆に戦前の意識で今の日本の有り様を否定するのでもない、まっさらな時代の肉声とでもいうべきものが、彼らの手紙の中にはあふれているように思います。
あの時代、あの戦争について、見方はそれぞれあると思いますが、歴史の観客席の高みから、過酷な時代を文字通り命がけで走り抜けた若者たちを評論するようなことはしたくないというのが、本作りをしているあいだずっと考えていたことでした。彼らが残したあるがままの言葉を受けとめていただければと願っています。
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