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「Presents」
角田光代 小説 松尾たいこ
紹介者 双葉社 文芸出版部 反町有里さん

 
プレゼントが伝える想い

 この本は、女性が一生のあいだにもらうプレゼントをテーマに描かれています。角田光代さんの小説と、松尾たいこさんの絵によるコラボレーションで、全十二編を収録しています。第一回の「名前」に象徴されるように、この本で描かれている贈りものは決して物とは限りません。また、たとえ物であっても、腐れ縁の恋人からもらった「うに煎餅」(!)のように、当事者の人間にとってはとても大きな意味を持っています(ちなみに、この「うに煎餅」の原稿を、私は何度も読み返していました。角田作品の素晴らしさが凝縮された一編です!)。その他のプレゼントも、放課後の「初キス」や、女友達からの「ウェディングヴェール」、子供が描いた「家族の絵」など、贈り手の温かい想いが伝わってくるものばかりです。
 そもそも、この企画が生まれたきっかけは松尾さんの個展です。会場で松尾さんにご挨拶したときに、好きな作家について伺ったところ、松尾さんが最初に名前を挙げられたのが角田さんだったのです。ちょうどそのとき、私は角田さんの短編原稿を戴いた直後で、雑誌の挿絵をどなたにお願いしようか考えていたところでした。以前から好きなイラストレーターだった松尾さんの口から、角田さんのお名前が出たものですから即決! その場で挿絵の依頼をしました。のちに、お会いになったおふたりが意気投合され、数ヵ月後には連載がスタートする運びとなりました。
 毎月届く、角田さんの小説と松尾さんの絵は、まさしくプレゼントのようでした。初回限定のカバーデザインは、鈴木成一さんによるラッピングカバー仕様なのですが、かつて例のないブックデザインもサプライズプレゼントでした。このような本が、たくさんの読者の方にも喜んでもらえるプレゼントであればいいなと思います。


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