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「たったひとつの贈りもの わたしの切り絵のつくりかた
児玉 清 著
 
紹介者 朝日出版社第2編集部 菊池好道さん

 
本好きがつくる切り絵

 児玉清さんは俳優業のかたわら、英米文学の文庫版の解説や、書評を手がけることもある無類の本好き。移動中はつねに読書とおっしゃるとおり、かばんの中には海外小説の英語版のハードカバーが必ずといっていいほど、数冊入れられています。
 この切り絵の本に収録された作品は、そんな本好きの児玉さんならではの方法で作られたとてもユニークなものです。というのは、この切り絵はなんと、雑誌の切り抜きを材料につくられているからです。作品の中の人物や風景は、すべてヨーロッパやアメリカのファッション誌やカルチャー誌などから切り抜いたページを使ってつくられています。
 児玉さんの切り絵のスタイルは、すべての作品の制作に立ち会った私が、何度見ても驚くほど大胆でスピーディーなものでした。下絵を描き、その題材にふさわしい色や柄のページを雑誌から切り抜き、パーツを切りとって貼りつけていく作業は、大胆ですばやく、しかも正確なものでした。はさみの自然な動きにゆだねたその大胆さと正確さから、本書に掲載されている、かわいらしいユニークなキャラクターがいくつも作りだされるわけですから、作品が出来あがる過程を見ることは、毎回とても刺激的で、制作日をいつも待ち遠しく感じていました。
 また作品の解説とともにお話しいただいた、子ども時代や学生時代の話、ヨーロッパ旅行の話はとても興味深いものでした。本書では、それらの話をエッセイや、作品解説として紹介することができ、これまでの経験や思い出、趣味などの切り絵作品への影響を、読者の方々に知っていただくことができる本にすることができました。
 厳しいスケジュールの中、どうにか刊行までこぎつけた切り絵の作品集。デザイナーやカメラマン、私たち編集者が、児玉さんの制作に立ち会った時間の蓄積がつくりだした一冊のように思います。


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