イチオシ!青春をまるごと描ききった大傑作
この小説には、青春のすべてが盛り込まれている。恋愛に、友情に、音楽に全身全霊で体当たりしていく少年少女たち。彼らの姿は、輝くまでに美しく、息苦しいまでに痛々しい。とりわけ、主人公の少年の高校三年間に起こったことは壮大な悲劇だ。しかし、彼が感じた喜びも哀しみも苦しみも、すべてがかけがえのないものだった。そして、この小説が重苦しくならず爽快に感じられるのは、音楽の描写に、その秘密がある。いろんな名曲が、楽譜を追いながら演奏しているような臨場感をもって描かれる。だから、クラシック音痴の僕でも、演奏者になったかのような気持ちにさせてくれるのだ。さらに、この小説が奥深いのは、生きることの意味を問いかける哲学も語られているからだろう。読後にその哲学がズシリと心の中に残る、素晴らしい小説である。 |