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重いけれど美しい物語たち
『静人日記』も『十字架』も死という重いテーマを扱っている。しかし、辛いことの積み重ねの先に見えてくる光は限りなく美しい。
松田哲夫(まつだてつお)
1947年東京都生まれ。編集者。ブックコメンテーター。筑摩書房顧問。「王様のブランチ」にて書評コーナーを13年務めた。著書に『「王様のブランチ」のブックガイド200』、『印刷に恋して』、『「本」に恋して』など。
『静人日記』
天童荒太
イチオシ!何度も何度も目頭が熱くなった
 直木賞受賞作『悼む人』の主人公・坂築静人が綴った日記、という形式の小説である。『悼む人』の世界をより深く辿ることができると同時に、同作品の序章として読むこともできる。なによりも、味わい深い小説なのだ。天童さんは、日々、報道などで目や耳にした死者たち一人一人に心をとめ、そこに作家的な想像力を加えて、短いけれど研ぎ澄まされた掌編小説を次々と生み出していく。その一篇一篇からは、人の死の重さがしみじみと感じられるとともに、民話のような温もりと感動も伝わってくる。そして、珠玉の掌編に刺激されるように、静人の周辺にも魅力的な人物が登場してきて、物語もダイナミックに動き出す。『悼む人』が死をめぐる物語であるとともに深い愛の物語でもあったように、『静人日記』も切なく哀しい愛の物語へと変貌していくのだった。
『十字架』
重松清
心の底に響き渡る物語
 いじめを苦にして中学二年生が自殺した。遺書には、見殺しにしたのに「親友」と書かれていた少年の名前と、「ごめんなさい」と謝られた少女の名前があった。償いきれない重荷を背負った二人と自殺した少年の父親との二十年にわたる心の通い合いを描いた感動的な物語。
『すき・やき』
楊逸
留学生の目に映った人間模様
 芥川賞を受賞した中国人作家の最新作。高級すき焼き屋で仲居のアルバイトをする留学生・虹智(ココちゃん)。着物の着方、すき焼きの調理法、お客のもてなし方まで、さまざまなカルチャーショックを体験しつつ、淡い恋心も芽生えてくる。軽妙な語り口のあったかい物語。
『ぬるい男と浮いてる女』
平安寿子
自己啓発本よさようなら
草食系男子、バレー狂いの「アラ還」女、不思議ちゃん女子、この短編集に登場してくる人たちは、はた迷惑なぐらいにマイペースな人物ばかり。彼らの演じる勝手気ままな行状を笑いながら読んでいると、「もっとわがままに生きてもいいんだ」と爽快な気分になってくる。
『虫と歌 市川春子作品集』
市川春子
奇妙な味わいの愛の物語
植物人間、昆虫人間などが誕生し、人々と心を通わせていく。SFやファンタジーのような設定の物語なのに、描かれているのは日常の風景が多い。そして、この世界で絡まり合っていく心理の綾が切なく迫ってくる。光と影を繊細に描き分ける絵柄も魅力的な異色コミック。


 
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