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味わい深い直木賞受賞作
今回の直木賞、二人とも受賞時に50代。去年に続いて、キャリア十分な作家の受賞だ。さすがに受賞作は味わい深い作品揃いである。
松田哲夫(まつだてつお)
1947年東京都生まれ。編集者。ブックコメンテーター。筑摩書房顧問。「王様のブランチ」にて書評コーナーを13年務めた。著書に『「王様のブランチ」のブックガイド200』、『印刷に恋して』、『「本」に恋して』など。
『遥かなる水の音』
村山由佳
イチオシ!天性の物語作家が本領を発揮した力作
 昨年、『ダブル・ファンタジー』で柴田錬三郎賞、島清恋愛文学賞、中央公論文芸賞を受賞した村山さんの最新作。「僕が死んだら、その灰をサハラに撒いてくれないかな」。パリの旅行代理店に勤める緋沙子は、弟の遺言を叶えるため、モロッコへと旅立つ。同行するのは、弟の友人だった浩介・結衣という若い男女と、ゲイで資産家である中年のフランス人男性。この四人のモノローグに、ガイドのサイードや死んだ弟の声も入り交じって、一人一人の心の中にあるわだかまりを照らし出していく。『ダブル・ファンタジー』では圧倒的な官能描写と濃厚な恋愛ドラマが話題を呼んだが、『遥かなる水の音』では、うってかわって人間心理の機微をていねいに描いていく。そして、クセの強い登場人物たちが、お互いに影響し合いながら「何か」をつかみ取るラストは美しい。
『廃墟に乞う』
佐々木譲
第一四二回直木賞受賞作
 犯罪捜査で心に傷をうけ休職中の刑事仙道孝司。彼のもとに、ちょっと訳ありの捜査依頼が舞い込む。刑事でもなく民間人でもない微妙な立場を活かして、鮮やかに事件を解決していく。北海道という地域の抱えている問題を背景に、家族の愛憎を鋭く優しく描く珠玉の短編集。
『ほかならぬ人へ』
白石一文
第一四二回直木賞受賞作
  財閥の家系の三男に生まれた宇津木明生が、真実の愛と伴侶を求めてさまよう物語。主人公をはじめ登場人物たちは、それぞれ普通でない部分をもっている。そういう男たち、女たちが繰り広げる劇的なドラマから目を離せない。大人の寓話ともいうべき味わいの中編小説集。
『戦友の恋』
大島真寿美
人生という戦場を駆け抜ける
漫画原作者と担当編集者、二人の女性の友情を超えた深い絆を描く連作小説集。編集者は、巻頭の一篇であっさりとこの世を去ってしまう。遺された一人は、亡くなった女性の存在をどこかで感じながら生きていく。友情物語としても、編集者と作家の物語としても秀逸な作品。
『桐島、部活やめるってよ』
朝井リョウ
青春って愚かで愛おしい
まず、ポップな歌を奏でるような、活き活きとした語感に引き込まれる。さらに、ちりばめられた比喩が読者のイメージを喚起してくれる。十七歳の高校生たちをとりまく世界の空気、彼らの揺らぐ気持ちなどがリアルに伝わってくる。青春小説の傑作が、また一つ誕生した。


 
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