イチオシ!名優が演じる一人芝居を観ているようだ
内戦で荒廃した街、廃墟になりかかっている建物。そこに、植物状態で横たわる夫と看病する妻の姿がある。英雄と呼ばれた夫は、仲間内のいさかいで首に弾丸を撃ち込まれ、意識をなくした。妻は夫に向かって、これまで心の内に秘めていたことを、絞り出すように語りかけていく。夫や家族への不満、性をめぐるさまざまな思い、そして、娘たちの出生の秘密にいたるまで。終始、妻一人の動きと語りだけで、すべてが表現されていく。一人芝居の舞台劇のような、カメラをフィックスしたままの映画のような、そういう緊張感が全編にはりつめている。そして、思いがけないラストは衝撃的だった。読後に、読者の心の中に、ズシリと重い石が残る物語だ。先日、私も出演した「週刊ブックレビュー」で桜庭一樹さんがオススメの一冊にあげていたので読んで、圧倒された。 |