イチオシ!最後には深い感動が響き渡ってくる
シャッター商店街にある「小暮写眞館」。このお店を買って住みついた花菱一家と友人たちの物語。花ちゃん、ピカちゃん、テンコちゃん、コゲパン……登場するのは、ちょっと風変わりだけど愛すべきキャラクターばかり。彼らのユーモラスな日常が、軽妙な会話と共に描かれていく。ある日、主人公のもとに心霊写真が届く。そこに秘められた謎を解くうちに、人々が抱えている心の傷が少しずつ明らかになって……。宮部さんはこれまで、数多のドラマティックな物語を書いてきた。ところが今回は、大きな事件や犯罪が起きない七一三ページの大作に挑んだ。そして、優しさをとことん貫き通して、この素晴らしい物語を描ききった。そのおかげで、最後の百ページ余りの、たたみ込むような展開には、圧倒され、翻弄され、深い感動が心の底から響き渡ってくるのだった。 |