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『小さいおうち』が直木賞に決定!
実は、私が編集した万城目学さんの『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』も候補作でしたが、残念ながら受賞することはできませんでした。
松田哲夫(まつだてつお)
1947年東京都生まれ。編集者。ブックコメンテーター。大正大学客員教授。著書に『「王様のブランチ」のブックガイド200』、『印刷に恋して』、『「本」に恋して』など。
『小さいおうち』
中島京子
昭和モダンの世界にタイムスリップ!
 時は昭和初期、「事変」は続いているが本格的な戦争には至っていない。当時は、昭和モダンの文化が花開いていた。舞台は東京郊外の私鉄駅近くに建てられた、赤い三角屋根の小さな洋館。この家で女中奉公してきたタキは、晩年になって、平井家の人々と共に暮らした懐かしい日々を回想していく。世相の推移とともに、中産階級の品のいい生活が華やかに繰り広げられる。こうして語られる家族の物語は、しみじみと味わい深く、秘められた恋物語も切なく響いてくる。そして、「最終章」では、甥っ子が、タキの遺したノートとある漫画家の回顧展を手がかりに過去を振り返るうちに、驚くべき真実が明らかになる。読後、過ぎ去った時と登場人物たちの気持ちに思いをはせ、しばし呆然としてしまった。巧みな語り口、鮮やかなエンディング、さすが直木賞受賞作だ。
『影法師』
百田尚樹
うまい! うますぎる!
 著者初の時代小説だが、とんでもない大技を仕掛けておき、要所要所には周到に伏線が張り巡らしてある。最後には、伏線としての事件や出来事が、大きな謎を支えるものとしてくっきりと立ち上がってくる。読後、「武士の生き様」というテーマが鮮烈に印象づけられるのだ。
『一〇〇年前の
女の子』
船曳由美
少女に導かれて時間旅行
 これは、けなげに生きた少女の成長物語である。そして、彼女がナビゲーターになって、四季ごとに変化する村の生活、華やかなお祭りや行事など、古き良き日本人の暮らしぶりを眼の前にありありと見せてくれる。この感じ、宮崎アニメの世界に入り込んでいく時の快さに近い。
『光媒の花』
道尾秀介
深い闇をくぐり抜けて
 痴呆の母を抱える中年男性の隠された過去、ホームレス殺害に手を染めることになった小学生の兄妹の絶望など、人々は大切な何かを守るために、悲しい嘘をついていく。しなやかな文体で、人間の心の中にある闇の深さをえぐりだす連作長編小説。今年度山本周五郎賞受賞作。
『いまも、君を想う』
川本三郎
私小説の域に達した追想記
 川本さんは、三十五年間連れ添った妻恵子さんを食道癌で亡くした。そして、「『幸せだった』頃のことを思い出すように」追想記を書いていく。読み進むと、さりげない言葉の数々が、お二人の共有した時間の密度を想像させてくれて、場面ごとに静かな余韻が残っていく。


 
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