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「ちくま文学の森」復刊しました!
私の41年間の編集者人生で、最も思い出深いアンソロジー「ちくま文学の森」(1988)が文庫版で10巻復刊され、9月から刊行中です。
松田哲夫(まつだてつお)
1947年東京都生まれ。編集者。ブックコメンテーター。大正大学客員教授。著書に『「王様のブランチ」のブックガイド200』、『印刷に恋して』、『「本」に恋して』など。
『原稿零枚日記』
小川洋子
限りない寂しさから静かな安らぎが
 ここに綴られているのは、夢のような現実、現実のような夢。ちょっといびつな、でも本当にありそうな出来事ばかり。そして、ページを閉じても、一つ一つの場面が鮮明な絵となって残る。苔料理とシャーレ、胡桃のような子どもの踝、生活改善課のRさんとトランペット、公民館の「あらすじ教室」、校閲者とのファックスのやりとり、盆栽フェスティバルと桂チャボ、子泣き相撲と赤ん坊、現代アートの祭典見学ツアー……。読み進んでいくうちに、これを書いている女性作家のことが気になってくる。彼女はいろんなものを失い、さらに失いつつあるようだ。とりわけ、「子ども」に関する喪失感が、痛いほど伝わってくる。失い続けることの寂しさ。でも、その底の方では、すべてを受け入れていこうとする静かな安らぎのようなものすら感じられる。不思議な小説だ。
『あんじゅう 三島屋変調百物語事続』
宮部みゆき
人の心が生み出す怪異物語
 『おそろし』の続編だが、『小暮写眞館』時代小説版という感じ。この物語の中で起きる事件もおどろおどろしいものではないし、出てくる妖怪なども愛らしいものが多い。でも、宮部さんは、人の心の闇から決して目をそらすことはない。南伸坊の挿絵が物語に色を添えている。
『ふがいない僕は
空を見た』
窪美澄
疾走感のある文章が快い
 生活レベルは低く、家庭も壊れかかり、通っているのは三流校、そして、ゆがんだ性的関係。それでも、彼らはもがき続ける。このあがきを見ていると、人間どんなにたががはずれたってなんとかなるさ、といった希望のようなものすら感じられ、ホッコリと温かいものが残る。
『おとぎのかけら 新釈西洋童話集』
千早茜
有名童話とがっぷり四つ
 DV、いじめ、嫉妬、売春、不倫、介護など現代社会の病める部分を視野に入れつつ、この世離れした華麗さや血塗られた残酷さもたっぷり盛りつけてできあがり、極上の幻想童話集。一話一話が長編のように豊かな広がりをもちながら、短篇として小気味よく完結している。
『おおきな木』
シェル・シルヴァスタイン
シンプルだけど奥が深い
 わかりやすい言葉とシンプルな絵で構成された絵本。訳者の村上さんは「あなたがこの物語の中に何を感じるかは、もちろんあなたの自由です」と書いている。「少年」にひたすら与え続ける「木」を肯定的に見るか、否定的に見るかで世界ががらりと変わってしまうだろう。


 
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