どんでん返しに驚く青春音楽ミステリー
指を切断されたはずの天才ピアニスト永嶺修人。彼が演奏をしていたという奇怪な報告から物語は始まる。シューマンに取り憑かれた少年たちの感情過多で衒学的な振る舞いが濃密に描かれていく。彼らが熱く語るシューマン論も、真剣さが伝わってくるだけに説得力がある。芸術的な青春小説の世界にひたっていると、最大のクライマックス「幻想曲の夜」がやってくる。読者は再び、ミステリーの世界へと引き摺り込まれるのだ。そこには、殺人、倒錯、衝撃、切断、失踪などドラマチックな展開が待ちかまえている。次々と明らかになる「真実」に動揺しつつ、主人公の手記を読み終える。そして最終章、主人公の妹の手紙を読んで、心底驚愕した。まったく予想もしなかったどんでん返し。こんなに充実した物語を味わうことができるミステリーは久しぶりだった。 |