あらゆる意味で型破りな物語に圧倒されます
これは、東京神谷町に豪邸を構える柳島一家三代の型破りな物語です。貿易会社を成功させた竹治郎とロシア人の妻の間には二女一男、三人の子供がいます。さらに、長女と入り婿の間には四人の子供がいて、このうち二人は父と母が異なるという複雑な関係なのです。でも、子供たちは、この家独自のルールに従って、知的で豊かな暮らしを送りつつ、成長していきます。この物語は語り口もかなり型破りです。一章ごとに語り手がかわり、語っている年月も、四十六年の間を自在に飛んでいくのです。こうして、立体的なジグソーパズルのピースをはめるようにして、一家の姿が鮮やかに浮かび上がってゆきます。この一家の風変わりな世界に馴染んだと思っていると、ラスト五十ページで思いがけないドラマが展開され、壮大な愛の物語に見事に幕が下ろされるのでした。
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