イチオシ!リアリティと作り話の配分が絶妙です
小田急線世田谷代田駅から徒歩五分、築ウン十年のオンボロアパートには風変わりな住人が集い……と、こう書き出すと、よくある貧乏長屋の心温まる人情劇だと、誰でも思うでしょう。でも、その予想は見事に裏切られます。だって、ひとりひとりの正体や本音が露出してくると、どの人物もアブナイ人、アヤシイ人ばかりなんですから。それも、性的なことや男女関係にかかわっているのだから困ったものです。でもでも、もっとよくつきあってみると、実はそれなりにいい奴だったりするんです。だから、最終的にはほのぼの人情ドラマに行き着くんですね。入り口と出口は一緒でも、その間にはとんでもないことが起こっているというわけです。この若さで、こんなに円熟した物語を生み出すことができるしをんさん、これからもバリバリ楽しい作品を書いてくれそうですね。
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