この子たちに幸あれと祈りたくなる
宮部さんの怪談話では、いつも子どもの姿が印象的です。とりわけ、この作品では、子どもたちがいきいきと活躍しています。少年探偵団顔負けの活躍をするいたずらっ子三人組がいるかと思えば、おしゃまな七歳の少女は、神社の狛犬さんから怪物退治の方法を教わってきます。もうひとりの七歳の少女は真顔で「父さまは、よく化ける猫はお嫌いですか」と問いかけます。無垢でひたむきな子どもを前にすると、大人はもちろん、妖怪だろうが神様だろうが、ついつい気を許してしまうのでしょう。でも、登場してくるのは恵まれた子どもばかりではありません。虐待され殺される子どももいます。そういう、いびつな世の中や歪んだ大人の犠牲となった子どもたちの痛ましい姿も、宮部さんは見つめ続けます。ほほえましいドラマの裏にあるものを決して忘れないのです。 |