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哲っちゃんの今月の太鼓本!
大震災から2ヵ月経ちました
東日本大震災で出版界も大きな打撃を受けました。一日も早く立ち直り、本や雑誌の力で人々を支えていってほしいと願っています。
松田哲夫(まつだてつお)
1947年東京都生まれ。編集者。書評家。『中学生までに読んでおきたい日本文学』(あすなろ書房)が版を重ねている。著書に『印刷に恋して』、『「本」に恋して』など。
人質の朗読会
『人質の朗読会』
小川洋子
耳を澄ますと彼らの声が聞こえてくる
 地球の裏側のある村で、遺跡観光ツアーの参加者と添乗員八名が、ゲリラ組織に拉致されます。そして百日以上が過ぎ、軍と警察の特殊部隊がアジトを急襲した際に、人質と誘拐犯は全員死亡してしまいます。それから二年後、アジトに仕掛けられていた盗聴テープが公開されます。そこには、「何でもいいから一つ思い出を書いて、朗読し合おう」という朗読会の記録が残されていたのです。鉄粉まみれの鉄工所、欠けた英字ビスケット、運針、コンソメスープ作り、槍投げ……彼らが語る物語を読むと、限りなく懐かしい気持ちになります。それに加えて、温かさもじんわりと伝わっています。朗読は悲惨な現実の出来事を阻止することはできません。
でも、亡くなったひとりひとりが書き、語った物語は、彼らがそこに確かに生存していたことの証しとなるものでした。
ワーカーズ・ダイジェスト
『ワーカーズ・ダイジェスト』
津村記久子
平成のプロレタリア文学?
 ここには、華やかなロマンスも、めざましいサクセスストーリーもありません。この社会で働いている人の日常が、ユーモラスに描かれていくだけです。満員電車を「食材詰め放題競争」に喩えるなど卓抜な表現に噴き出しながら読み進むと、ほっこりと心が温まってきます。
いねむり先生
『いねむり先生』
伊集院静
しみじみ伝わる男の友情物語
 「先生」(色川武大)は、競輪や麻雀など賭け事の世界にどっぷりつかりながら、汚れなき魂を持ち続け、多くの人たちに愛されていました。心に深い傷をもつサブロー(伊集院静)は、「先生」の優しさに包まれ、楽しい時間を過ごしながら、少しずつ立ち直っていくのでした。
空也上人がいた
『空也上人がいた』
山田太一
大人のための極上メルヘン
 二十七歳の草介は、ある事故がきっかけにヘルパーの仕事をやめてしまいます。ケア・マネージャーの重光さんは、八十一歳の老人・吉崎さんの在宅介護の仕事を彼に紹介します。介護を通じて老人と青年が向き合い、そこに生まれた小さな奇跡を静かに見つめていく傑作です。
続・星守る犬
『続・星守る犬』
村上たかし
犬のひたむきな姿に心洗われます
 大きな反響を呼んだ正編を温かく包み込むように、この続編は描かれています。見捨てられた犬が、老人や子どもと幸せな時を過ごします。犬を飼ったことがある人は誰でも、いろんな場面で心が動かされるでしょう。抑制の効いた表現で深い感動を与えてくれるコミックです。