今年は「辻村深月イヤー」になる!
『ツナグ』が吉川英治文学新人賞受賞、『本日は大安なり』が山本周五郎賞候補。 この勢いでいくと、直木賞作家になる日も近い!
松田哲夫(まつだてつお)
1947年東京都生まれ。編集者。書評家。 『中学生までに読んでおきたい日本文学』(あすなろ書房)が版を重ねている。 著書に『印刷に恋して』、『「本」に恋して』など。
エンタメ界に開いた大輪の花に拍手!
いやあ、このおもしろさは尋常ではありません。十一月二十二日、日曜日、大安。 舞台はホテルの結婚式場。四組のカップルの挙式が進行中です。それぞれの会場に癖のあるキャラが登場してきます。 周囲の人々からの祝福を素直に受けられない秘密があったり、面倒な事情のカップルばかり。 こともあろうに、この「良き日」に何かをしでかそうとしている奴までいます。 スピーディな物語の展開にあわせて、花火大会での尺玉連発のように、思いがけないことが次々に起こるのです。 グランド・ホテル形式で、四組のこみ入った話を同時並行に盛り上げていって、鮮やかなエンディングへと導く、 三十一歳とは思えない、見事なストーリーテリングです。 これだけの人物造形、語り口と展開のちからをもっているとは、ハリウッド映画の傑作シナリオにも匹敵するできばえです。
並んだ本が語り始めるとき
同商會では、これまで、ありそうでなかった不思議な世界を、本というかたちで、読者の目の前に繰り広げてきました。 久しぶりの新刊では、実在の本と架空の本が入り交じって多彩な本棚を構成しています。個性豊かな登場人物さながら、本たちの囁きに耳を澄ませると……。
恋愛小説家による極上の一品
これまで、趣向を凝らした恋愛小説で読者を楽しませてくれた作者の最新作です。 登場人物たちは熟年離婚したり、歳の離れた若い女性と再婚したり、それぞれに華やかな日々を送っています。 風変わりな人たちの話なのですが、読んでいて爽やかな気分になるから不思議です。
大震災が人生の分かれ目に……
ある女を主人公に小説を書くという奇妙な依頼を受けた青年のお話です。 彼は、取材を進めるに従って、依頼主の生臭い意図に気がつきます。 しかし、そうなればなるほど青年は、魅力的なヒロインに惹きつけられ、憑かれたように小説を書き続け、運命の日を迎えるのでした。
文芸テイストの夢コミック
過労で心身症になった作者は、不安な日々に見ていた悪夢を描き続けました。 自己治療法のつもりだったそうです。そのせいか、多くの夢は、そこに閉じこもっているよりは、より大きな世界へと開かれていくという予感に満ちています。 夢を物語に昇華させた見事な作品です。