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村上春樹さん、今年も残念でした!

今年はNHKでノーベル文学賞の発表を待ちました。最近、『1Q84』英語版が発売されて大変な反響とのこと。来年が楽しみです。

松田哲夫(まつだてつお)

1947年東京都生まれ。編集者。書評家。『中学生までに読んでおきたい日本文学』(あすなろ書房)が好評、続編を準備中。著書に『印刷に恋して』、『「本」に恋して』。

イチオシ!心がぽかぽか温まる直木賞受賞第一作

舞台は、終戦直後、焼け跡になった東京の浅草です。登場するのは三人の男たち。お人好しの万歳芸人、岡部善造。ひねくれ者の復員兵、鹿内光秀。戦災孤児の田川武雄。彼らは実演劇場(ミリオン座)に吹きだまるように身を寄せ、心優しい踊り子ふう子のアパートに同居することになります。物資も食料も足りない暮らしですが、そこには、生き抜こうという意欲、それに、かけがえのない優しさと人情がありました。DDT、代用蒸しパン、額縁ショー、買い出し、ストリップ、日曜娯楽版など、活き活きと描かれた焼け跡闇市の生活・風俗を通して人びとの哀しみやよろこびが切々と伝わってきます。私たちも、いつの間にか、この時代にタイムスリップして、かりそめの家族とともに暮らしているような気分になり、心がぽかぽかあったかくなってくるのでした。

美味しさがさえわたる逸品

小川糸さんの魅力は、料理やお菓子などの描写が活き活きとしていること。その小川さんが、再び食べ物小説を手がけたのが、この短編集です。驚くのは、最後の一編のクライマックスで美食小説の流れとまったく違う方向に物語をもっていったこと。これぞ物語調理法の妙味です。

絶妙な語り口に魅せられて

不可解な連続殺人事件が発生、次の犯行現場は、超一流ホテル・コルテシア東京らしい。警察は潜入捜査を開始し、優秀な女性ホテルマンと切れる警察官のコンビが最前線に立ちます。プロフェッショナルな二人の競い合いが微笑ましく、恋愛小説を読んでいるような気分です。

一途に燃え上がる運命の恋

野外ロックフェスティバルが開かれる睦ッ代村。村長の息子広海は八歳年上のモデル織場由貴美の美しさに魅了されていきます。そして、この村の隠された不正を暴こうとしている由貴美と広海に、悲劇的な事件が襲いかかり……。一途に燃え上がる少年の思いが切ない恋物語。

健康半分

『健康半分』

赤瀬川原平

病気との賢いつきあい方

老いにまつわるネガティブなイメージをポジティブにとらえ直すことを提唱してベストセラーになった『老人力』が楽しく進化しました。病気のことを「病気さん」と擬人化し「ほどほどの交際」なんて笑わせながら、「なるほど」と思わせられる、味わい深いエッセイ集です。