第146回芥川賞・直木賞の記者会見
「ニコニコ動画」生中継は楽しかったです。でも、このまま続けていくと記者会見を拒否する受賞者が出てくるかもしれませんね。
松田哲夫(まつだてつお)
1947年東京都生まれ。編集者。書評家。『中学生までに読んでおきたい日本文学』(あすなろ書房)が好評、続編を準備中。著書に『印刷に恋して』、『「本」に恋して』。
イチオシ!徒手空拳、「北海道」に立ち向かった超力作!
これは、『こんな夜更けにバナナかよ』で大宅賞と講談社ノンフィクション賞をW受賞した渡辺さんが徒手空拳、二十年の歳月をかけて「北海道」に立ち向かい書き上げた壮大なルポルタージュです。両足を失った伝説の漁師、タンチョウ保護とエゾシカ駆除、「まずい米」を一新した農家、流氷と北海道観光、ニシン漁の今昔、陸の孤島の人びと……。ナイーブな著者は何度も足を運び、根気よく人びとの話を聞きながら、問いを投げかけます。すると、北海道が、すなわち地方が直面している困難や矛盾が鮮やかに見えてくるのです。そして、ぶ厚い一冊を閉じた後には、この土地に生きる漁民、農民、住民ひとりひとりの顔が、くっきりと浮かびあがってきます。彼らの表情は、決して暗いものではありません。蛮勇とでも言いたくなるチャレンジに大きな拍手を送ります。
直木賞受賞の感動的時代小説
謎の多い事件で、幽閉先での家譜編纂と十年後の切腹を命じられた戸田秋谷。その秋谷を監視し事件の真相を探るようにと命じられたのが、城内で刃傷沙汰に及び、切腹を逃れた檀野庄三郎。彼は、真っ直ぐに生き通す秋谷にひかれていきます。武士らしく生きる男たちの物語。
真剣で愉快な二人の対話集
「世界のオザワ」と「正気の範囲をはるかに超えている」音楽好きの村上さん、二人が音楽について語り合います。弾むような対話を楽しんでいると、小澤さんの「じっと楽譜を見ているとね、音楽が自然にすっと身体に入ってきます」という真っ直ぐな言葉に深い感銘を覚えます。
幻想物語のようなエッセイ
作家でありデザイナーでもある著者のエッセイ集です。身辺雑記だと思っていると、そこに銀座木挽町で鮨屋を営んでいた曾祖父のことなど、違った味わいの話が加わってきます。こうして、私たちは、私小説仕立てでタイムトラベルする幻想物語を楽しむことができるのです。
陽気な安野さんの歩んだ人生
幼年の淡い恋のようなときめきをはじめ、安野さんは折々に人と出会い心を通わせてきました。その一つ一つの思い出が貴重な宝物のように語られます。八十五年という永い年月のことなので別れの話が多くなり、書いている安野さんの切ない気持ちが伝わってくるようです。