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「週刊ブックレビュー」終了を惜しむ

私も8回出演した、テレビで唯一の本格的な書評番組「週刊ブックレビュー」(NHK・BS)が3月で終了します。とても残念です。

松田哲夫(まつだてつお)

1947年東京都生まれ。編集者。書評家。『中学生までに読んでおきたい日本文学』(あすなろ書房)が好評、続編を準備中。著書に『印刷に恋して』、『「本」に恋して』。

イチオシ!この作品は間違いなく直木賞か本屋大賞を受賞する!

疾走感のある文章に圧倒されたデビュー作『ふがいない僕は空を見た』は山本周五郎賞、本屋大賞第二位に輝きました。そして、さらに表現力としなやかさを増した文章で綴られた第二作が発表されました。物語は典型的なロード・ムービーのスタイルを踏襲しています。二十四歳の青年・由人、四十八歳のデザイン会社社長・野乃花、十六歳の少女・正子、生きることに疲れ切った三人は、ニュースで見た迷えるクジラめざして進んでいきます。寄る辺ない人びとが演じる切なくも哀しい、どこか滑稽なドラマには心底魅せられました。人間の弱い部分、ダメな部分を容赦なくえぐり出しながら、決して絶望することなく突っ走っていく人たちの姿には半端ではない感動を覚えます。デビュー作に続いて「出産・育児」というテーマをしっかり見据えているところにも敬服しました。

共喰い

『共喰い』

田中慎弥

記者会見で注目された受賞作

記者会見での不機嫌な受け答えが生中継されて、にわかに注目を浴びている田中さんの芥川賞受賞作です。暴力的な性描写もあるのですが、下関弁の会話がかもし出すユーモアと、川べりの町を凝視する絵画的な情景描写が、この悲惨な物語に神話的なテイストを与えています。

骨太で力強い「生き抜く」物語

ガンで余命宣告をうけた女医は、自分の病院と自分の治療を大学時代の友人に一任します。この二人の友情を軸に、別れや終わりを経験し、自分の限界を強く感じている人々が、もう一度(ワン・モア)自分の人生に向き合っていこうとする姿を活き活きと描く連作短編小説です。

本と読者をつなぐキーマン

書名の「本屋」は「『本』を手渡すことに躍起になってしまう人」、すなわち読者に心を込めて本を届けることに情熱を注いでいる書店員のことをさしています。こういう人々を日本各地に訪ね歩いて、厳しい状況のなかで奮闘する仕事ぶりをていねいにレポートしていきます。

うなぎだけでも大満足!

これは呉服屋の若旦那・藤岡椒太郎がうなぎをおいしく食べ続けるだけの漫画です。こんなに狭いジャンルのグルメ漫画は珍しいのですが、これがなかなか面白いんです。白焼き、肝焼き、くりから焼、う巻き、うざく、肝吸い、うな茶、うなぎ酒など美味しい蘊蓄話が満載です。