『週刊ポスト』の連載が始まります
題して「ニッポン元気印時代──愉快痛快人名録」。私が出会ってきた人たちとの交友録を4月16日発売号から約1年間書きます。
松田哲夫(まつだてつお)
1947年東京都生まれ。編集者。書評家。『中学生までに読んでおきたい日本文学』(あすなろ書房)が好評、続編を準備中。著書に『印刷に恋して』、『「本」に恋して』。
イチオシ!バブル崩壊後の「男たちのジハード」
大手証券会社に入り、ビジネスエリートの道を邁進していたひとりの男に艱難辛苦の波が襲いかかります。妻の病気によって家族は崩壊し、不況の大波を受けて会社は破綻します。再就職した損害保険会社でもリストラの波に襲われます。三度目の転職は仙台郊外のレベルの低い大学。報われることの少ない激務は続きます。でも、一生懸命仕事をしていると、それなりに安定してきて、しだいにつのる恋の予感もあるのです。ところが、そこに難問が立ちふさがります。この男の人生は、一難去ってまた一難、といった感じです。まさに、リアルな人生そのものです。バブル崩壊後の日本の男たちの仕事と生活を象徴しているともいえます。身につまされながら読む人も多いと思いますが、そういう人を含めて、読むと、いろんな感慨が浮かんでくる、リアルで奥の深い物語です。
中学生たちの悩みと喜びと感動
合唱コンクール目指して練習に励む五島列島の中学生たち。そこにはさまざまな不協和音が生じてきます。でも、一人一人が抱えている問題を解決すると、そこには美しいハーモニーが立ち上がってくるのです。巧みなドラマ作りで、爽やかな青春物語を堪能させてくれる一編。
歴史冒険ファンタジーの傑作
織田信長の天下取りに立ち向かう越前の一向衆。激しく攻め入る信長軍に信仰を旗印に村々の住民たちも戦にかり出されます。その時、一人の少女が、大切な仲間を守るために敵軍に挑みます。歴史的な出来事を背景に、架空の少女を活き活きと活躍させる迫力満点の物語です。
時代の空気を丸ごと捉えた力作
日露戦争、大逆事件、貧民窟、銀座、美食、流行……硬軟とり混ぜた対象、地を這う取材、新しい表現などで評判を呼んだジャーナリストの足跡を辿ります。天民ひとりを追うのではなく、同時代の新聞・出版・ジャーナリズムの有り様と共に描いていく筆さばきが鮮やかです。
落語の色気を漫画で表現する
三浦しをんさんに教えてもらいました。満期出所の模範囚与太郎は昭和最後の大名人八雲に無理矢理弟子入りします。八雲の芸の奥深さを知るとともに、好敵手だった故助六との秘話が明らかになっていきます。古典落語の魅力を描き出す筆力は並大抵のものではありません。