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村上春樹さん「朝日新聞」へ寄稿

「魂の道筋 塞いではならない/日中韓文化交流への影響を憂う」という率直なメッセージ、三国の若者たちの心に届いて欲しい。

松田哲夫(まつだてつお)

1947年東京都生まれ。編集者。書評家。「週刊ポスト」で「松田哲夫の愉快痛快人名録 ニッポン元気印時代」を連載中です。著書に『印刷に恋して』、『「本」に恋して』。

ある男

『ある男』

木内昇

イチオシ!「政治」に翻弄される男たちの物語

七編の物語は、明治元年から十九年ごろまでの日本各地が舞台になっています。新しい国家体制を強化するために、地方を締め上げる中央政府。ご一新への期待を裏切られ、中央への憤りをつのらせる人民。その狭間にいて思い悩んだり、賢く立ち回ったりした歴史の脇役たちが登場してきます。一話一話は、ユーモラスだったり、ゾクッとしたり、スリリングな展開があったりと、物語を読む楽しさに充ち満ちています。さらに、ラストのどんでん返しに不意打ちを食らって、「政治」は一筋縄ではいかないことを、肝に銘じさせられるでしょう。もう一つ印象に残るのは、男たちが語る「民権」に加えられていない女たちの自在さです。そこには、男たちの政治を打ち破る何かの胎動が感じられるのです。「維新」がもてはやされるいま、読まれるべき小説だと思います。

時代小説に期待の新星!

町のざわめき、風のそよぎ、わらべ歌や太鼓の音……芝神明宮の門前町、そのたたずまいが活き活きと目の前に浮かんできます。そして、この町でくり広げられる人間模様には、しっとりとした情感がこもっているのです。デビュー二作目にして、この描写力は注目に値します。

ああ、これが青春なんだなあ

それは、突然、飛んできた赤いトマトから始まったのです。謎めいた可愛い転校生久野ちゃんに恋してしまった涼太。気持ちだけが空回りし、自分の恥ずかしい部分に直面することも多いのですが、それでも、自分の気持ちに素直にぶつかっていく、その不器用さが爽やかです。

手から、手へ

『手から、手へ』

池井昌樹
植田正治
山本純司

詩と写真の感動的な出会い

限りないやさしさに育まれたこどもたちは、やがて世の中に巣立っていく……親の切なる願いが、詩の全編から伝わってきます。この詩に、夢のように幻想的な家族の写真が重なったとき、言うに言われぬ感情が湧き上がってくるのです。人生の折々に開いてみたい一冊です。

最果てアーケード

『最果てアーケード』①

小川洋子
有永イネ

小説とは違う味わいを楽しむ

原作のイメージを乱されたくないと、漫画版はしばらく読まずにいました。思い切って読んでみると、登場人物はみな若くコミカルな振る舞いもしますが、死と隣り合わせの感覚、物に思いを託す気持ちなどはしっかり伝わってきて、改めて物語を堪能することができました。