本、雑誌、CD・DVDをお近くの本屋さんに送料無料でお届け!

読売出版広告賞の選考委員になる

第17回から同賞選考委員になりました。北村薫委員長のもと、厳正だけど楽しく賞を決めました。発表は1月23日とのことです。

松田哲夫(まつだてつお)

1947年東京都生まれ。編集者。書評家。「週刊ポスト」で「松田哲夫の愉快痛快人名録 ニッポン元気印時代」を連載中です。著書に『印刷に恋して』、『「本」に恋して』。

イチオシ!暗闇に光をともす最強のメルヘン

誠、正二、香は、東京北部の三つの区が重なる地域に住む三人きょうだいです。父親は多額の借金を負ったまま、突然姿を消してしまいました。意識不明で寝たきりの母親を抱えて、三人は過酷な日々を送っています。あまりにも生々しく、目を背けたくなるようなプロローグです。しかし、この重苦しい物語は、映画的手法でしだいに独特のリズムを刻み始めます。けなげに生きる三人は、絶望的な状況下に置かれても、かすかに感じられる希望を失うことはありません。そして、乾坤一擲、劇的に状況を変化させるような機会がやってきて、物語は怒濤のようなエンディングへと向かい、深い感動とともに心地よい涙が流れるのでした。この物語は、終始描かれる暗い描写にもかかわらず、これまでの天童作品にはない、メルヘンのような味わいを残してくれるのでした。

なんらかの事情

『なんらかの事情』

岸本佐知子

笑いがこみあげてくる

岸本さんは、普通の人なら見過ごしてしまうことが、気になります。耳の形って変じゃないかとか、サザエのふたにある細かい突起は何だろうとか。そういうものにこだわって妄想を膨らませていくと、言うに言われぬおかしみが感じられる不思議な世界が開けてくるのです。

幕が上がる

『幕が上がる』

平田オリザ

高校生の成長がまぶしい

舞台は北関東の高校、主人公のさおりは演劇部最後の一年を迎えます。部長になった彼女は、個性豊かな部員たちと、年にたった一度の大会に挑んでいくのです。演じるうちに、舞台の内容が充実していく様子が活き活きと描かれている、真っ直ぐで気持ちのいい青春小説です。

女に

『女に』

谷川俊太郎
佐野洋子

年配の男女の奏でる愛の賛歌

一九九〇年、五十九歳の詩人と五十二歳の絵本作家が結婚しました。翌年、ふたりは高らかに愛の賛歌を奏でたのです。それが、この詩画集です。丸谷才一さんが「年配の男女の恋を歌ふ」と評しました。ふたりの愛には六年で終止符が打たれますが、作品は永遠に輝き続けます。

月の満ちかけ絵本

『月の満ちかけ絵本

大枝史郎
佐藤みき

月を見るのが楽しくなる

最近、古き良き日本の生活文化を見直そうということで、旧暦の本や和の行事の本が売れています。とりわけ月に興味をもつ人が多いようです。この絵本は「新月」から始まって二十九日半の満ち欠けをたどり、月にまつわる伝承や見るポイントなどを親切に教えてくれます。