和田竜さんおめでとうございます!
『村上海賊の娘』上・下巻(新潮社)が本屋大賞に輝きました。『のぼうの城』から応援してきた私にとっても嬉しい受賞でした。
松田哲夫(まつだてつお)
1947年東京都生まれ。編集者。書評家。個人編集の「小学生までに読んでおきたい文学」全6巻(あすなろ書房)が完結しました。著書に『印刷に恋して』、『「本」に恋して』。
イチオシ!「私ノンフィクション」の大傑作!
日本人は、心の病とどのように向き合ってきたのか。本書は、一九一〇年代から現在までの研究と治療の歩みをたどった力作ドキュメントです。とりわけ、河合隼雄の箱庭療法、中井久夫の絵画療法に着目し、それ以前と以後では心理学・精神医学がどのように変っていったのかをていねいに検証していきます。さらに、二十一世紀に入ってから、心の病の世界が劇的に変化しているという指摘にも驚かされます。それだけではありません、本書は著者自身の切実な思いも込められた、「私ノンフィクション」でもあるのです。取材や執筆の間には、さぞかしつらいこともあったと推察されます。それを乗り越えて書き上げた著者には、心から拍手を送りたいと思います。そのおかげで、僕たちは「人間の心」という永遠の謎に挑む大事な鍵を手渡されたような気がしています。
実話にもとづく感動の物語
太平洋戦争末期、沖縄では激しい戦闘が展開され、多くの人々が戦死し、島は焦土と化しました。戦後すぐに派遣された若き軍医エドは、画家たちのコロニーに出会い、彼らとの芸術を通した交流が始まります。『楽園のカンヴァス』の作者ならではの感動的な美術小説です。
ファンタジータッチの意欲作
ストレス性の病を抱えている青年「あおの」は、どんな病も治すというキシダ治療院を訪れます。そして、「つきの」という女の子とともに、手伝いとして住み込んで治療に専念することに……。シンプルな癒やしの物語が、終盤に急変して、思いがけないラストを迎えます。
自分を見つめる哲学エッセイ
これはエッセイ? 日記? 手紙? 詩? 哲学的断片? 独り言ではあるけれど、他人のまなざしを過剰に意識するツイッターなどとは似て非なるものです。川上さんのまなざしは、自分の内側へ、その根底へと向かい、「世界」を視野に入れて、「思い」考えていくのです。
水墨画の風格と劇画の迫力と
水墨画の名人が劇画に挑んだ意欲作。極寒の大自然に生きるフクロウ、オオタカ、オオカミなど動物たちの姿に魅了され、白いシベリア虎と巨大なヒグマの凄絶な死闘に圧倒されます。劇画家井上雄彦が筆で描いている『バガボンド』に拮抗する画力を堪能できる作品です。