『縁もたけなわ』出版記念会
9月26日、水木しげる、嵐山光三郎、平尾隆弘、藤森照信、坪内祐三、天童荒太、角田光代の各氏が発起人で賑やかに催されました。
松田哲夫(まつだてつお)
1947年東京都生まれ。編集者。書評家。池内紀、川本三郎、そして松田が編集したアンソロジー「日本文学100年の名作」(新潮文庫・全10巻)9月から毎月刊行しています。著書に『印刷に恋して』、『縁もたけなわ』。
イチオシ!直木賞受賞第一作で今年のミステリー・ベストワン!
──爺はなんで倒れたんや。毒でも服ませたんか。
──そんな危ないことするかいな。
冒頭から軽妙な関西弁の会話にのせて語られる、とことん悪い奴らの物語です。妻に先立たれた九十一歳の耕造は、六十九歳の小夜子と同居するのですが、夏の暑い日に脳梗塞で倒れます。小夜子は、結婚相談所所長の柏木が目を付けた資産家の老人に、色仕掛けで迫って後妻になり、遺言状を書かせ、事故などに見せかけて殺し、財産を奪いとるのでした。そして、彼らの悪事を嗅ぎつけた興信所探偵は、上前をはねようと必死に肉薄します。テンポのいい語り口に乗って読み進むと、悪党どもの仲間になったような気分になりかけます。考えてみれば、悪の実感をもたずに悪辣な犯行を重ねる彼らの感覚は、このように軽く明るいものなのかもしれません。
ますます冴えわたる語り口に注目
名ストーリーテラーの最新作は、SF仕立ての愛と死の物語です。自動車塗装工の木山慎一郎は、幼い頃に両親と妹を亡くし、孤独な人生を送ってきました。ある日、彼の目に「死を目前にした人」の姿が見えるようになります。さらに、思いがけない出来事が起こるのでした。
「文庫解説」を書きました
ライト・ミステリーと呼ばれる赤川作品。作者は、犯罪の謎解きよりも、人間心理の方が解き難いことを深く理解しています。でも、「イヤミス」のように苦味を強調して終わらせず、明るくしめくくります。この後味のよさが、圧倒的人気のひとつの鍵のような気がします。
本を手に取る楽しみが増える!
鈴木さんは、三十年間に一万冊を手がけた、人気、実力ともに当代一のブックデザイナーです。彼が装丁した約百五十冊を取り上げ、デザインの要所、イラストレーターや絵の選び方、文字の入れ方など、装丁作業の舞台裏を明かします。苦労と工夫と喜びの日々の記録です。
真剣勝負のお仕事コミック
公務員になった義経えみるは、福祉事務所に配属され、ケースワーカーとして生活保護に関わる仕事についたのでした。不正受給する人がいるかと思うと、焦って自立しようとして立ち往生する人もいます。現代社会の大問題に真っ正面から取り組む社会派コミックの力作です。