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西加奈子さん直木賞おめでとう!

「いま、素晴らしい作家たちが素晴らしい小説を書いています。本屋さんに行って1冊買って読んで下さい」(西さんの記者会見での言葉)

松田哲夫(まつだてつお)
1947年東京都生まれ。編集者。書評家。毎月刊行している、池内紀、川本三郎、そして松田が編集するアンソロジー「日本文学100年の名作」(新潮文庫・全10巻)は6巻が刊行されました。著書に『印刷に恋して』『「本」に恋して』『縁もたけなわ』など。

 短編小説の名手による作品集。絶妙な語り口が魅力です。タイトルの「アンブラッセ」という言葉は「めぐりあいて」という作品に出てきます。この言葉は、フランス語で「抱擁」または「キス」のことだそうです。主人公の女性は、深く心を寄せた男性と二度抱擁しただけで別れてしまう。でも、自分には「魂の燃えるほどの恋」だったと思い、官能的な夢を見るというお話です。この他にも、夢の中に入っていく、または夢のような現実に出会うことで、違う場所に行ったり、別の考えが浮かんだりするお話が並んでいます。歳を重ねて、成熟することで、それまで見えなかったものが見えるようになる。だから、そういうお話を読んでいると、フワッと夢の中に紛れ込んだような、不思議な読後感が残ります。古典について教養のある著者ならではの紹介も鮮やかです。

『その女アレックス』

ピエール・ルメートル

 昨年末に発表された主要なミステリー・ランキング海外部門で軒並み一位を獲得して注目を集めているフランスの犯罪小説です。いろんな意味でミステリーを読む醍醐味を味わわせてくれます。小川洋子さんほか日本文学を愛読してきたという作者の緻密な描写力には脱帽です。

『たまきはる』

神藏美子

 「たまきはる」とは「命」にかかる枕詞です。父親の死に直面し、友人の死に接した著者は、写真と文章で、「生きる」「死ぬ」「愛する」ということの根源を自らに問い続けます。千石剛賢さん、田中小実昌さんの言葉とともに、寺山修司さんのヌード写真が鮮烈な余韻を残します。

『洋子さんの本棚』

小川洋子
平松洋子

 岡山で少女時代を過ごし、いまは文章をなりわいとしている、同年代の二人の対話集です。人生の節目に出会った本のこと、食べものや映画のことなどから、歩んできた道程が見えてきます。やわらかな言葉のやりとりで、折々に出会った辛酸や苦味の意味を掘り下げていきます。

『妄想科学小説』

赤瀬川原平

 昨年十月の逝去後、この桁外れの表現者を再発見する試みが続きます。「芸術新潮」二月号では、その全貌を紹介する大特集を組みました。『妄想科学小説』は、この人の発想と文章の魅力が満載の単行本未収録作品です。『増補 健康半分』(デコ)とあわせてお楽しみ下さい。