上橋菜穂子さんおめでとう!
第12回にあたる2015年本屋大賞に『鹿の王』上下巻(KADOKAWA)が選ばれました。サポーターの一人としては最高の幸せです。
松田哲夫(まつだてつお)
1947年東京都生まれ。編集者。書評家。池内紀、川本三郎、そして松田が編集するアンソロジー「日本文学100年の名作」(新潮文庫・全10巻)は8巻が刊行され、完結も間近です。著書に『印刷に恋して』『「本」に恋して』『縁もたけなわ』など。
イチオシ!主人公とともに知的冒険旅行に旅立とう!
主人公はフリーターの原陽一郎です。大学を出てIT企業に就職するのですが、陰湿ないじめにあい退社してしまいます。定収もなく、恋人もいない、友人と始めたゲーム制作だけが楽しみな二十七歳。典型的な現代の若者である彼のもとに、謎に満ちた封書が届き、腹に一物ありそうな男が訪ねてきます。そこで伝えられるのは南米のパラグアイ、大豆栽培、穀物メジャーといった別世界の夢のようなお話。東北の歴史や社会、満州の王道楽土の夢、そして血のにじむような南米開拓……陽一郎は、先人たちの足跡をたどりながら、自分の中で変化していくものに気づいていきます。「大豆」という「慎ましやかな万能の種子」に注目し、そこから地球規模の食文化や経済のありようまでをも俯瞰しようという、気宇壮大な試みに圧倒される、太宰賞作家、渾身の超大作です。
生きてるって哀しいね
三十五万部に達している、又吉さんの処女小説です。研ぎ澄まされた言語感覚をもつ神谷と、彼を師と仰ぐ徳永、二人は、共感しながら別々の道を進んでいくのですが……。漫才を通して、人と人との関わり方の底にあるものをあぶり出す、心にしみる芸談であり、人情話です。
さらば、軟弱な和風建築論
太古から未来まで射程に入れて建築を語る藤森、独特のアングルから建築をとらえる藤塚。二人がタッグを組んで、日本の木造建築に挑みました。国宝からわずか一坪の船小屋まで、よりダイナミックに、より繊細に木造建築の強さと美しさの深奥を探り当てていくのでした。
不登校から解放された少年
不登校に苦しんだ実体験を基にしたコミック。担任の先生、家庭教師、塾の先生など、いろいろの先生と出会います。切りすてるように扱う先生も、寄り添ってくれた先生もいました。そうして、あこがれの鳥山明先生と出会って、少年は生きる希望を見つけだすのでした。
もっともっと知りたい!
日本人の食生活には欠かせないウナギですが、近年「絶滅危惧種」になるのではと心配されています。食文化、歴史、伝説、生態、漁業、養殖など、ウナギに対する基礎知識を、楽しいクイズで紹介しています。シーズンを前にして、読めばますますウナギが美味しくなります。