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審査委員長の言葉
「太鼓本大賞」は、昨年から始めたもので、これが二回目です。私が、この一年間に読んできた小説のなかから、とりわけ深い感動や喜びを与えてくれた作品を選んでいます。二〇一〇年の小説といえば、なんといっても村上春樹さんの『1Q84』BOOK3(新潮社)でしょう。しかし、すでに翻訳された中国、韓国では大ベストセラーになり、ノーベル文学賞受賞も近いとも言われる村上さんは、別格だと言うしかないでしょう。そこで、新境地に挑戦した宮部みゆきさん、文庫がビッグヒットになり、次々に新作も発表された百田尚樹さん、もはや「新人」と呼ぶのは失礼なほど円熟している木内昇さんのお三方に、それぞれの賞を贈らせていただきました。
審査委員長のProfile
松田哲夫(まつだてつお)
1947年東京都生まれ。編集者(元筑摩書房専務取締役)。ブックコメンテーター。著書に『「王様のブランチ」のブックガイド200』、『印刷に恋して』、『「本」に恋して』など。
大賞
『小暮写眞館』
宮部みゆき
授賞理由:
これまで、多くの劇的な物語を書いてきた宮部さんが、この書き下ろし作品では、大きな事件や犯罪が起きない七百ページ余の大作に挑みました。シャッター商店街にある「小暮写眞館」を買って住みついた花菱一家と友人たちの物語です。ユーモアたっぷりの語り口で、私たち読者に、とても心地よい感動を与えてくれました。しかも、こういう作風になっても、宮部さんは人びとの心のなかにある闇の部分から目をそらすことはありません。『火車』などで追究してきたテーマを、角度を変えて追い続けているのです。宮部さんの新たな挑戦を祝して「大賞」を贈らせていただきます。
特別賞
『永遠の0』
百田尚樹
授賞理由:
この作品は昨年七月に文庫に収録されたのですが、今年の四月から急速に売れはじめました。毎週のように重版が出て、累計六十五万部にまで達しています。映像化や賞とは無縁なのに、こんなスピードで売れた小説はめったにありません。このブレイクの原因を知りたければ『永遠の0』を読むのが一番です。長い歳月を超えて、戦中の特攻隊員が発したメッセージがズシンと響いてきます。これを読めば、どの世代の人間も、「自分はあの戦争を直視してこなかった」という気持ちになるでしょう。この感動的な物語を届けてくれた百田さんに「特別賞」を贈らせていただきます。
新人賞
『漂砂のうたう』
木内昇
授賞理由:
舞台は明治初めの東京根津遊廓。読み始めると、いつの間にか遊廓の中を歩いているような気分になります。この異様な臨場感は、しなやかでイメージ豊かな文体から紡ぎ出されてくるのでしょう。激しく流動する時代の底で、人びとは鬱屈を抱えて生きています。主人公は美仙楼という見世に務めている定九郎。彼の周囲には一癖も二癖もあるキャラクターが揃っています。臨場感あふれる舞台装置に個性豊かな役者たちが勢揃いして、読者の目の前で極上の大芝居が演じられるのです。すでに熟達した書き手である木内さんの今後に期待して「新人賞」を贈らせていただきます。


 
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