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三回目の「太鼓本大賞」です。私が、この一年間に読んだなかで、とりわけ深い感動を与えてくれた作品を選ばせてもらいました。今年は、なんと言っても三月十一日の東日本大震災が強烈に記憶に残っています。私たちの暮らしがいかにもろい地盤の上に成り立っているかを思い知らされました。そういうことを考えたわけではありませんが、大賞、特別賞ともに死が重要なモチーフになっている繊細かつ骨太の作品です。そういえば、文庫では角田光代『八日目の蝉』(中公文庫)が震災後にも売れ続けていたのが印象的でした。地震、津波、放射能といった災厄を経て、なお読み継がれるのは、こういう背骨がしっかりと通っている物語なのかもしれません。 |
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松田哲夫
(まつだ・てつお)
1947年東京都生まれ。編集者(元筑摩書房専務取締役)。書評家。著書に『印刷に恋して』、『「本」に恋して』など。編著に『中学生までに読んでおきたい日本文学』がある。 |
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