授賞理由:
深い愛情に包まれた歩の家族は、イランから大阪、エジプトへと転居するうちに一家離散してしまいます。そして、自分だけはまっとうだと思っていた歩までも、孤立無援に陥ります。でも、この長く辛い家族崩壊の物語を読み続けられるのは、いつでも優しく見つめてくれる矢田のおばちゃんのような存在がいるからでしょう。そして、その底には、いつも「生きる」という強い意志が働いています。今はどんなに辛くても、生きてさえいれば、必ず開かれた場所にたどり着くことができる。本を閉じた後にも、この一家の物語が与えてくれたものの大きさと温かさに、圧倒されています。よって、今年の大賞を贈ります。
● ● ● 受賞者・西加奈子さんの言葉 ● ● ●
この10年で得たものや失ったもの、すべてをぶっつけて書いたのが「サラバ!」です。この子を太鼓本大賞に選んでいただいて、(勝手に)作家としての10年を褒めていただいたような気持です。本当に嬉しい!!
【プロフィール】 西加奈子(にし・かなこ)
1977年イラン・テヘラン市生まれ、エジプト・カイロ、大阪育ち。04年『あおい』でデビュー。07年『通天閣』で織田作之助賞大賞受賞。13年『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞受賞。他著に『さくら』『きりこについて』など多数。