紙面掲載した書評をご紹介 「図書新聞」の書評コーナー

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「図書新聞」の紙面で紹介した書評や、対談記事をご紹介します。【週1回更新】
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 ◆ 3303号(5月13日発売号掲載)

個と共同と

――20世紀の歴史的経験が刻印されたロシア思想を読み解く
インタビュー:桑野隆

 ■ロシア文化・思想研究者の桑野隆氏が新著『20世紀ロシア思想史――宗教・革命・言語』(岩波書店)を刊行した。バフチンに始まり宗教哲学、言語思想、革命思想、ソヴィエト時代の哲学からポストソ連の思想に至るまで、二〇世紀ロシアの諸思想を包括し、その思想の沃野を展望する待望の思想史である。

 今年はロシア革命から一〇〇年。いま改めてこの一世紀を思想史的に検証してみたい。本書を手がかりに、桑野氏に話をうかがった。(3月9日、東京都新宿区にて。聞き手・米田綱路〔本紙編集〕)…続きを読む

ファシズム批判の再生のために

――三木清はオプティミスティックな思想家だったのでは
評者:篠原雅武

 本書『三木清教養論集』は、三木清が一九三〇年代から四〇年代にかけて書いた文章のアンソロジーである。じつは、三木清を読んだのも、高校二年のときだったが、今回この本を読んで気づいたのは、三木清がファシズムとの対決のなかで考え文章を書いていることに自覚的であった、ということである。私が大学生の頃、一九九〇年代後半は、三木清をも含めた京都大学出身の哲学者たちは「京都学派」とひとくくりにされ、「近代の超克」の思想を提唱し、大東亜共栄圏の思想史的意義を論じた「戦犯」とみなされ、葬られていた。三木もまた「東亜協同体論」の主唱者として、同じ穴のムジナ扱いを受けていた。だが、じつはそれほど簡単ではない。本書の文章も、そのあたりの微妙さへの理解から選ばれているのだろう。…続きを読む

ジョン・レノンとポール・マッカートニーの結合にザ・ビートルズの本質がある

――ビートルズはロック音楽の創始者だ
評者:大野秀樹

 二〇一七年四月一〇日、浅田真央が引退を表明した。直後からのテレビや新聞、週刊誌などのマスコミのフィーバーぶりは凄まじいものがあった。オリンピックで金メダルを取れなかったアスリートに対するこのような騒ぎは、過去に例がなく、今後もきっと起こらないだろう。しかし、仮にこのときに米国が北朝鮮を攻撃したならば、引退報道はベタ記事や瑣末ニュースで終わったに違いない。タイミングが重要だ。

 一方、評者らは、一九七〇~七一年、イカダで津軽海峡横断を試みた。津軽半島から北海道を目指し、四回目に成功した。冒険心からであったが、大義名分は縄文人が海峡を渡っていたことを学術的に実証することであった。評者は、このことをザ・ビートルズにたとえて、前者はジョン・レノン的、後者はポール・マッカートニー的と評した。〈ポールのあの一般性をもった音楽がなければ、ビートルズの例の熱狂的な人気は決して生まれなかったでしょう。また、あのような幅の広い音楽になりえなかったでしょう。しかし、彼らの本当の叫びを代表しているのはジョンであり、その魅力は彼の才能ばかりでなく、彼自身の生き方に大きく由来しています〉(現代の探検、八:六六、一九七二)。…続きを読む