紙面掲載した書評をご紹介 「図書新聞」の書評コーナー

1949年創刊。硬派な人文書からホットなサブカルチャーまで紹介する週刊の書評新聞「図書新聞」とe-honのコラボ企画!

「図書新聞」の紙面で紹介した書評や、対談記事をご紹介します。【週1回更新】
取り上げる本や評者を厳選し、確かな見識で深く掘り下げた書評は「読み応えアリ」です!
「図書新聞」定期購読はこちら

 ◆ 3307号(6月10日発売号掲載)

「冷戦経験」を考え抜く

――大学は自由と自治の「最後の砦」になれるのか
石原俊氏インタビュー

 ■石原俊著『群島と大学――冷戦ガラパゴスを超えて』が共和国より刊行された。「群島」と「大学」、この二つはどのような関係にあるのか。一見、それほど関係がないようにも思えるが、実際にはどうなのだろうか。そして、「冷戦ガラパゴス」とはどういうことか。著者の石原氏に話を聞いた。(インタビュー日・5月12日、東京・神田神保町にて。聞き手・須藤巧〔本紙編集〕)

 ■「冷戦ガラパゴス」をいかに克服していくのか

  ――本書はいわゆる論文集ですが、ほぼ書き下ろしに近いですね。四部構成で、「第一部 同時代史という現場」「第二部 群島という現場」「第三部 大学という現場」「第四部 書物という現場」と、すべての部に「現場」という言葉がついています。「はじめに」には、去年に四九歳で亡くなってしまった道場親信さんに本書が捧げられると書いてあります。…続きを読む

八〇〇〇m峰登頂を夢から現実にしてくれるガイドブック

――登山ダイエットはメタボリックシンドローム改善の最強のツールだ
評者:大野秀樹

 〈いちばん弱い人のペースに合わせてゆっくりゆっくり登っていく。私は体が小さくて弱かったけれど、みんなと話しながら登っていけば、頂上に着くことができて、ああ私にもできたのねって、こうやったという満足感がすごくありました。それとどんなにつらくても、あれは誰も選手交代ないんですね。絶対自分ががんばらなきゃいけないという〉(NHK総合テレビ「あの人に会いたい 田部井淳子」、二〇一七年四月一日)。

 「誰も選手交代ない」。これは、登山の本質の一つだ。病気、外傷などで行動不能にならない限り、どんなに疲れても苦しくとも、自分の足で歩かなければならない。登山では、最も弱い人のペースに合わせて歩く必要がある。一人でも弱い人がいれば、ペースは激減する。天候の急変など、歩行速度を上げたいときにもそれができず、全員が危機的状況に陥りかねない。著者の山本正嘉・鹿屋体育大学教授は、中高年者の集団登山は極力避けた方がよい、と唱える。さもなければ、数名に一人はサブリーダーをつけ、それぞれ別パーティーとしても行動できるように配慮するべき、と。つまり、集団登山では、最も弱い人でも登ることができる山をチョイスすることが重要だ。…続きを読む

「日活ロマンポルノ」時代を俯瞰する貴重な映画誌

――日本映画史のなかでも多くの傑作・名作を生みだしたことは断言していい
評者:皆川 勤

 わたしにとって日活映画とは、少年期は小林旭(石原裕次郎には、それほど共感を抱くことはなかった)の渡り鳥シリーズであり、二十歳前後の頃は、折からの対抗と抵抗の渦動のなか、鈴木清順監督の旧作品がまとめて上映されたのを観て清順世界に魅了されていったことを、取りあえずは意味している。その時期、鈴木清順は日活を解雇されていたため作品を撮ることはできなかったが、澤田幸広の『反逆のメロディー』(70年)と『関東幹部会』(71年)を観て、衝撃を受ける。そして、藤田敏八の『八月の濡れた砂』を71年8月、立ち見で観た記憶がある。それが、旧体制での最後の日活作品だったのを、後で知ったのか、その時すでに認知していたのかは、もう覚えてはいない。

 本書は、71年11月、新体制での日活作品、いわゆる日活ロマンポルノ(後に「にっかつロマンポルノ」)としてスタートした二作品(西村昭五郎監督・白川和子主演『団地妻昼下がりの情事』と林功監督・小川節子主演『色暦 大奥秘話』)から、88年11月の「ロッポニカ」最後の二作品(藤田敏八『リボルバー』、金澤克次『首都高速トライアングル』)までの詳細なフィルモグラフィーを付し、作品に関わったプロデューサー、監督、脚本家、俳優など、総勢一〇八名のインタビュー、エッセイなどを収録した、「日活ロマンポルノ」時代を俯瞰する貴重な映画誌である。…続きを読む