紙面掲載した書評をご紹介 「図書新聞」の書評コーナー

1949年創刊。硬派な人文書からホットなサブカルチャーまで紹介する週刊の書評新聞「図書新聞」とe-honのコラボ企画!

「図書新聞」の紙面で紹介した書評や、対談記事をご紹介します。【週1回更新】
取り上げる本や評者を厳選し、確かな見識で深く掘り下げた書評は「読み応えアリ」です!
「図書新聞」定期購読はこちら

 ◆ 3308号(6月17日発売号掲載)

反緊縮!

――アナキズムとは、人間が「生きてしまう」力
ブレイディみかこ氏インタビュー

 ブレイディみかこ著『子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から』が、みすず書房より刊行された。EU離脱、移民問題などなど(つい先日は総選挙もあった)、イギリスもご多分に漏れず「問題、山積み」である。普段はイギリスに住むブレイディ氏が来日の折、本書をめぐって話を聞いた。(インタビュー日・5月16日、東京・神田神保町にて。聞き手・須藤巧〔本紙編集〕)

 ■地べたには政治がゴロゴロ転がっている

 ――『子どもたちの階級闘争』、小説のようだと思って泣きながら読みました。保育士であるブレイディさんが、ご自身で名づけたところの「緊縮託児所」――二〇一五、六年の保守党政権下、緊縮時代のイギリス・ブライトンで、子どもやその親や家がないような人などに様々な福祉を提供する場所――が、無味乾燥なフードバンク化していく様子が本書第Ⅰ部で描かれています。後半の第Ⅱ部は、それから一〇年弱前の「底辺託児所」――これもブレイディさんの命名で、自ら「英国最低水準一%に該当するエリアの施設」と名のるセンター(託児所)――にブレイディさんがいたときの様子が描かれている、という珍しい構成になっています。

 本書「はじめに」でブレイディさんは「どうやら保育士という仕事をしている人間は、あまり政治を考えるのは向いてないらしい」と書いていて、そして「おわりに」には、「わたしの政治への関心は、ぜんぶ託児所からはじまった」とあります。…続きを読む

「分断された日本」をつなぐ野心的試み

――さまざまな「理論的たくらみ」に挑む
評者:助川幸逸郎

 田中和生はこれまで、江藤淳や戦後派文学をおもに論じてきた。田中自身の生年は一九七四年。江藤淳にも戦後派にも、「世代的共感」など持ちようもない。「旬だった時代」を直接には知らない対象の、今日的存在意義を問いなおす――それが批評家としての、田中の基本スタンスといっていい。今回の『共同幻想論』読解も、この路線にのっとって展開される。

 まず田中は、東日本大震災とそれにつづく原発事故が、「日本」に何をもたらしたかを検証する。

 「日本は戦後、戦前の〈無責任体制〉を克服し、〈平和〉と〈民主主義〉を目ざしている」

 そういう戦後的価値観が、三・一一以降共有されなくなり、日本人は国民としての統合を喪った。この状況に応接するために、「共同幻想」の概念があらためて問われなくてはならない。田中はそこから、議論を立ちあげる。…続きを読む

「感性」と「文化」を連結させて、どのような像が紡ぎだせるのか

――「一九六八年」前後の文化の変化について描き出す
評者:皆川 勤

 「感性文化」とは、不思議な捉え方のように思われる。そもそも、「感性」や「文化」という概念には、極めて多様なイメージが胚胎しているから、その二つを連結させて、どのような像が紡ぎだせるのだろうかと、わたしは本書を前にして、真っ先に感じたからだ。

 著者の言葉を援用してみるならば、次のようになる。

  「一九六八年という一年だけにピンポイントで特定できるかどうかはともかくとして、この一九六〇年代末から七〇年代前半にかけてのこの時期に、文化のあり方や感性のあり方に大きな変化があったということは、もちろんこれまでにもいろいろな形で論じられてきた。」「『一九六八年』前後の感性の変化も、単に『戦後』の中での話としてだけみているのでは不十分である(略)。」「戦前から、場合によっては明治以前から続いてきた古い文化のあり方を視野におさめ、そこからの連続や断絶のありようを見極めながらその歴史的位置をはかるような見方が必要である。」…続きを読む