紙面掲載した書評をご紹介 「図書新聞」の書評コーナー

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「図書新聞」の紙面で紹介した書評や、対談記事をご紹介します。【週1回更新】
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 ◆ 3312号(7月15日発売号掲載)

2017年上半期を振り返る

二度目は「茶番」か「惨劇」か――この世界の未来はどこにあるのか
対談:西谷修×木下ちがや

 ■ついに共謀罪まで成立してしまった。国会、代議制、あるいは国家は、「擬制」であるにせよ、もう少し「立派」なものだと思っていたが、どうやらこちらの誤解、思い過ごしだったようだ。だからといって、黙っているわけにはいかない。恒例の読書アンケート号に際して、西谷修氏と木下ちがや氏に、今年の上半期を振り返ってもらう対談をしていただいた。(対談日・6月14日、東京・高田馬場にて。須藤巧・本紙編集)…続きを読む

ルービンの貨幣論がよみがえる

――1920年代ソ連の政治経済学の水準を示す、読みごたえのある研究
評者:梅澤直樹

 本書は、やはり竹永進氏によって邦訳された『マルクス価値論概説』(法政大学出版局、1993年)と一対を成すルービンの著作である。但し、後者が1923年に公刊され、1920年代末までに4版を重ねて当時のソビエト連邦における政治経済学研究、教育の代表的著作の一つとみなされたのに対して、本書はルービンが粛清の犠牲となって銃殺された後に親族によって密かに保管されていた草稿が2011年にようやく刊行されたものというように、対照的な来歴を有している。

 また、タイトルからの印象とは異なって、330ページを超える本書のうち草稿の邦訳部分は130ページであって、草稿の刊行に力を尽くしたR・ヴァーシナが付した解説、ルービンの著作目録、ロシア語版刊行翌年のドイツ語版に収録された数編の論考、最後の取り調べに際してのルービン自身の証言記録、そして竹永氏の訳者解説が草稿を補完している。ヴァーシナや竹永氏の力のこもった解説や、ルービンの経済学史研究をめぐる論考、さらにルービンの証言記録などからは、草稿がどのような知的、政治的環境の下で執筆されたものであるのかがよくうかがわれ、本書はルービンの貨幣論をトータルに提示した、そうした意味でのルービンの『マルクス貨幣論概説』となっている。…続きを読む

ポスト・ケインズ派の全体像を描く

――理論の全体に関する網羅的かつ詳細な紹介と検討を行った、貴重な日本語文献
評者:内藤敦之

 本書はポスト・ケインズ派の経済学を主題としている。近年の世界金融危機後は俄にケインズや金融不安定性仮説で有名なミンスキーが脚光を浴びたが、ポスト・ケインズ派は、まさにそのケインズ及びカレツキ等の影響を受けた学派であり、主流派とは異なった視角から主としてマクロ的な経済分析を行っている。構成は、第Ⅰ部(1―3章)ではポスト・ケインズ派経済学がどのようなものであるかを包括的に論じ、第Ⅱ(4―6章)、第Ⅲ部(7―9章)では貨幣、金融面を中心に取りあげ、第Ⅳ部(10―12章)ではカレツキに焦点を当てている。

 本書の重要な特徴は、第一に、ポスト・ケインズ派の理論の全体に関する網羅的でありながら、詳細な紹介及び検討を行っている点である(1、2章)。マルクス経済学等の他のヘテロドクスな経済学に比べて日本語での文献が少ないため、貴重な貢献となっている。様々な議論の紹介を行っているが、ポスト・ケインズ派のコアを「経済活動水準が有効需要によって決定される」点とし、政策的には完全雇用を達成するためには何らかの政策や制度が必要になる点を指摘している。他の主要な特徴は、所得分配をめぐる対立の重視、不確実性と期待の役割、貨幣経済と金融の重要性といった点であるが、本書では詳しく扱っている。…続きを読む