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2006年12月20日 読売新聞掲載 |
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「朝の読書」の次は「家読(うちどく)」。 |
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家ではボクたちが先生さ。 |
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家族みんなではじめる「家読(うちどく)」。お手本は子どもたち |
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(上段左から)小玉幸可さん、藤田和夏子さん、内田千尋さん
(下段左から)塩田紘之くん、見越広幸くん、益子祥直くん |
授業が始まる前の時間を利用して学校で本を読む習慣「朝の読書」。1988年に始まり、今や小・中・高をあわせると2万4000校、約900万人の児童・生徒たちの読書習慣になりました。また「朝の読書」を行うことにより、子どもたちの心が豊かになり、いじめや争いごとが減ったという良い報告も届いています。子どもたちの読書習慣は着実に根付く一方で、大人の読書事情はとても深刻な状態です。ある調査では、1ヶ月に1冊も本を読まない大学生以上の大人は3人に1人だと言われています。この状態を少しでも改善するとともに、家族の会話を増やしコミュニケーションを深めることができたなら―――。その答えのひとつが家で行う読書「家読(うちどく)」です。子どもたちが学校で行っている「朝の読書」は「あさどく」とも呼ばれています。この「あさどく」に慣れ親しんだ子どもたちに、大人たちが学んでみよう。子どもたちの声に耳を傾けてみよう。
どうすれば「家読(うちどく)」が家族の新しい読書習慣になるのか、子どもたちに考えてもらいました。 |
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子ども会議
「家読(うちどく)」はどんなふうにやればいいんだろう。 |
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「家読(うちどく)」のことをボクたちで考えてみようよ!と集まってくれたのは、茨城県久慈郡大子町の小学6年生の子どもたち。6人とも火曜を除く平日の朝15分から20分間「朝の読書」を行っています。「読書がとにかく楽しくなって本が好きになった。朝の読書は楽しい」と話します。大人が本を読まないことについては「読書の楽しさを知らないんじゃない?」「携帯電話ばかり触っているから本を読む時間がないんだよ」と痛いところをチクリ。さらに「本を読まなくちゃいけない法律をつくればいい」「会社のお給料を図書カードにする!」といったアイデアまで飛び出しました。そんな子どもたちの「家読(うちどく)」子ども会議の一部をご紹介します。 |
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一緒に読むのは無理でも、
家族みんなで同じ本を読めば感想を話したりできる。 |
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益子くん「ボクは家読(うちどく)いいと思う!」
塩田くん「賛成!」
藤田さん「でも、お父さんもお母さんも仕事で帰ってくるのが遅いし、疲れているし、家では本を読む時間なんてないんじゃない?」
(みんなうなずく)
小玉さん「それに、みんな起きる時間がバラバラだから朝は無理」
益子くん「学校では朝だけど、家読(うちどく)は夜?」
見越くん「一緒にやらなくても自分のペースでやればいいんじゃないの?」
益子くん「それだと、読まないような気がするなあ」
(みんなうなずいて悩む)
塩田くん「家族みんなで同じ本を読めば感想を話したりできるんじゃない?」
小玉さん「そうだ。同じ本を読めばいい!」
内田さん「同じ本を読んだら、主人公の気持ちを話し合ったり、感動したところを言い合ったりできるしね」
見越くん「忘れないために感想が書けるノートをつくるってどう?」
藤田さん「貸し出しノートみたいなもの?」
益子くん「家族みんなで同じノートに書けるといいかも」
藤田さん「じゃあ、学校でやるように感動した場面を絵にするのは?」
内田さん「おもしろーい!」
塩田くん「でも、お父さんたち書くかなぁ・・」
小玉さん「無理無理・・・」
藤田さん「でもお父さんの感想とかって、やっぱり聞きたいよね」
内田さん「うちは、“この本にある言葉、教えて”って聞けば教えてくれるよ。きっかけができるとやってくれるかもしれないね」
塩田くん「みんなで家読(うちどく)をやっていて、お父さん一人だけ参加していないと気にするはずだよね」
(みんな口を揃えて)「気にする!気にする!!」
内田さん「みんなで本をすすめ合うのがいいと思う。家庭文庫ができちゃうね」
見越くん「同じ本を読むとみんなでいろんなことが話せるよね。誰が犯人だろうとか」
益子くん「本はどうやって探す?何を読んだらいいのかわかんないよ。好みってちがうし」
藤田さん「大人と子どもが同じように楽しめる本を探すというのは?」
塩田くん「一緒に楽しめる本だよね。むずかしいなあ・・・」
益子くん「あっ、家族で一緒に本屋さんや図書館に探しに行くっていうのは?」
小玉さん「私たちが読んでこれはおもしろかったと思った本をすすめてみるのもいいね!」
見越くん「この本のどこがおもしろいの?って親が聞いてくれたら嬉しいな」 |
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子ども会議を終えて――――。 |
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家で、家族みんなで本を読む。楽しい娯楽がたくさんある今、家族で読書なんて嫌だと言われると覚悟をしていましたが、子どもたちは「どうして大人が読書しないのかわからない」と口々にいいました。読書の楽しみを知っている子どもたちは「学校の友だちと同じように、家族みんなで読んだらもっと楽しい」と真剣に考えてく れました。親と子が同じ本を読み、その本について語り合うことを、子どもたちは難しそうだけどやってみたい!おもしろそうだと感じていました。子どもたちに、いつから「家読(うちどく)」はじめる?と聞くと、一斉に「今日!帰ったらすぐに家族に話したい!」と張り切っていました。読書で家族の新しいコミュニケーションが生まれたら・・・。子どもたちもそれを望んでいるようです。そして、それが学校に、地域に広がれば、読書の楽しみは多くの大人たちに広がります。
学校で行う「朝の読書」による子どもたちの読書習慣は、およそ20年の歳月を経て、今、家族で行う「家読(うちどく)」として始まろうとしています。子どもたちが考えた5つの「約束」をもとに。 |
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子どもがどこに感動したのか興味をもつ。
同じ本を読む意味がそこにありますね。 |
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「家読(うちどく)」応援団長 児玉 清さん(俳優) |
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子ども会議に参加したこの子どもたちは本当にいい顔していますね。しかも子どもが家族で読書をする方法を考えてくれたのが嬉しいじゃありませんか。いま起きている殺伐とした事件の原因は「想像力の欠如」です。本を読まないと「想像力が欠如」する。もっと大人は本を読んで精神を養っていかないといけないと思います。子どもたちが言うように家族で同じ本を読んでみましょうよ。子どもたちがどんな本を読んでどんなところに感動したのか興味を持ってみる。まずはそこから始めてみませんか。 |
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